2002年4月28日(日)「しんぶん赤旗」
子育てや親の介護と仕事をどう両立させるか――切実な悩みです。これにこたえるのが育児・介護休業制度です。この四月から改善されましたが……。
育児休業は子どもが一歳になるまで、介護休業は介護をしなければならない家族がいる場合に三カ月まで、休める制度です。女性でも男性でもとれます。 |
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現在、すべての企業、事業所で育児・介護休業制度の導入が義務づけられています。労働者が休業を申し出たら、事業主はこばむことはできないことになっています。休業期間中は、四割の所得保障があります。
また、勤務時間短縮などの支援策も盛り込まれています。
育児休業法は、「仕事と家庭を両立させたい」という女性たちの切実な願いと運動を背景に一九九一年に民間企業に働く男女労働者を対象につくられました(九五年に介護休業制度が加わり、育児・介護休業法に)。結婚・出産しても働きつづける女性が増えるなかで、もっと使いやすいように、と改善が求められてきました。昨年、育児休業部分を中心に法改正がおこなわれ、この四月から全面施行されています。
不利益な扱いを禁止したり、残業制限、勤務時間の短縮、子ども看護休暇ができるようになるなどいろいろな面で前進があります。(別表参照) |
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〈不利益扱いが禁止に〉
最近の厳しい雇用情勢のなかで、都道府県の労働局雇用均等室への女性労働者の相談では、退職勧奨や解雇に関するものが増え、なかでも妊娠・出産を理由とするものが多くなっています。今回、制度の利用や申し出を理由とした解雇の禁止にくわえて、減給や希望しない配置転換、昇進・昇格などでの不利益な取り扱いも禁止されました。罰則規定はありませんが、この禁止規定をもとに職場での取り組みが大切になっています。
〈勤務時間や残業、転勤にも配慮〉
子育てや介護をしている労働者にとって、労働時間の短縮は切実です。とくに女性の残業や深夜労働を制限していた労働基準法の女性保護規定が撤廃されてから、女性にも男性なみの野放しの長時間労働や深夜労働が広がり、家庭との両立が深刻になっています。男性も含めて残業免除を請求する権利があらたに規定されたことや勤務時間短縮の対象が一歳未満から三歳未満に拡大されたことなど、男女労働者から歓迎されています。転勤させる場合には、育児や介護の状況に配慮しなければならないことももりこまれました。
〈子どもの看護休暇〉
「子どもが病気の時くらい、そばにいてやりたい」―「仕事と子育てを両立するために必要と思う対策」のアンケートでトップは「子どもの看護のための休暇」(32・6%)でした。努力規定にとどまったものの、小学校入学前の子どもが病気になったとき、看護のために休める制度がもりこまれたのは、こうした切実な願いにこたえるものです。
育児休業法が制定されてから十年余。制度ができても、まだまだ利用しにくいのが現状です。 |
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育児休業制度を出産した女性の56・4%が利用――。これは厚生労働省の数字ですが、これはあくまで働き続けている女性の中での割合です。実際は結婚や妊娠を機に退職した女性や、パートや有期雇用の女性たちは分母のなかに含まれていません。
育児休業を利用した家庭の子どもは生まれてきた子どもの一割程度というのが実態です。妻が出産した男性の利用はごくわずか、たったの0・42%です。
男性が育児休業をとることに肯定的な世論は七割と広がっていますが、社会や企業の支援が十分ではないと考えている人は80%にものぼっています。
制度の導入率を企業の規模別で見ると、五百人以上の企業では98%(育児休業)、96%(介護休業)なのにくらべ、三十人未満になると49%(育児休業)、36%(介護休業)です。不況のなかで経営が苦しい中小企業に対して、代替要員の確保への援助をはじめ、助成措置が必要です。
同制度を定着させ、利用を促進するには企業・社会全体の取り組みが必要です。女性労働者が育児休業をとりたいが利用しなかった理由の第一は、「職場の雰囲気」(43%)。介護休業の場合も「仕事がいそがしかった」が18%。制度はあっても、長時間労働や過密労働があたりまえの職場では、休暇をとること自体が困難な状況にあります。
また、現在の休業中の所得保障は四割ですが、育児休業をしない理由として「経済的に苦しく、生活できない」が40%となっており、増額が切実な課題です。
男性の利用が極端に低い背景には、所得保障の少なさとともに男女の賃金格差という大きな問題があります。
今回の改正で制度は一歩前進したとはいえ、誰もが利用しやすく、安心して子育てや介護をしながら仕事をつづけるためには、さらに制度の改善と労働条件の抜本的な改善が不可欠です。 |
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日本共産党は、改正案が論議された昨年の国会に独自の改正案を提案しました。
▽所得保障は六割に、▽保育所に入れない場合など休業期間の延長、▽介護休業を一年間に延長、▽深夜労働や残業の免除の拡大、▽病気や学校行事などのための「家族休暇」の創設、▽パートや派遣労働者なども取得しやすくする、など。
忙しい職場で「残業を免除してほしい」と声をあげること自体、たいへん勇気がいることです。
育児・介護休業を積極的に活用することで制度の定着をはかるとともに、家庭生活を大事にしながら働くことができるよう働き方の改善と男女平等の実現がもとめられます。
◆不利益取り扱い禁止
申し出や取得を理由に解雇・減給・労働契約の変更(正社員からパートにするなど)の禁止 (改正前は解雇のみ禁止)
◆勤務時間短縮などは3歳までに
勤務時間の短縮、始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げなどは事業主の義務。今回、対象年齢を1歳未満から3歳未満に。就学前までは「努力義務」
◆残業免除請求
就学前の子育て、家族の介護をおこなう場合、男女とも1カ月24時間、1年150時間を超える残業の免除を請求できる(新設)。
◆子どもの看護休暇
就学前の子どもの看護のための休暇を導入。事業主に努力義務(新設)
◆転勤などへの配慮
事業主は子育てや介護の状況に配慮しなければならない(新設)
公務員の場合は…
・育児休業と短時間勤務の対象を1歳未満から3歳未満にひきあげ
・介護休業期間を現行の3カ月から6カ月に延長
○育児休業は18カ月まで。8割の所得保障。
○労働時間短縮は8歳未満または小学校1年生終了まで
○看護休暇・12歳未満の子の看護のため両親合計で最高120日
○育児休業は3歳になるまで。
○12歳未満の子どものための看護休暇
○育児休業は原則1年で3年まで延長可能
○年あたり3日の看護休暇