2002年4月22日(月)「しんぶん赤旗」
小泉純一郎首相が二十一日朝、突然、靖国神社に参拝しました。記帳は「内閣総理大臣 小泉純一郎」。この日に参拝した理由を小泉首相は、所感で「終戦記念日やその前後の参拝にこだわり、再び内外に不安や警戒を抱かせることはわたしの意に反する」「例大祭に合わせて参拝することによって、わたしの真情を素直に表すことができる」とのべています。
しかし、八月の終戦記念日の靖国参拝が「不安や警戒」を抱かせ、四月なら抱かせない、などという言い分は、首相の靖国参拝に内外から批判が集中していることの意味を、首相がまったく理解していないことを示しています。
靖国神社は、戦前、天皇のための「名誉の戦死」をとげた人びとを「英霊」としてまつる宗教的軍事施設として、軍国主義と侵略戦争遂行の精神的支柱とされてきました。戦後は、一宗教法人とされたとはいえ、戦前の神社創建の趣旨はそのまま踏襲され、東条英機元首相をはじめA級戦犯を「昭和殉難者」として合祀(ごうし)しています。首相が参拝することは、侵略戦争を肯定する立場に日本政府が立つことを内外に表明することを意味します。だからこそ、日本の侵略をうけたアジア諸国などが、きびしく批判してきたのです。
小泉首相の“八月はできないから四月に”という「論理」こそ、昨年八月の靖国参拝がいかに国際的にも国内的にも通用しないものであったかを示すものです。
また、首相の参拝がいついかなる時期であれ、憲法の定める政教分離の原則に反することはいうまでもありません。この点で、春季例大祭(毎年四月二十一日から二十三日)の参拝はとりわけ重大です。
靖国神社によると、「一番重要な祭典は春秋の例大祭と合祀祭です」「これらの祭典には勅使(天皇の御使者)が差しつかわされ、皇族方も親しくご参拝になります」(同神社社務所発行「靖国神社の概要」)。例大祭こそ、神社として最重要行事。しかも、天皇家が密接に関与する宗教的色彩のきわめて濃いものです。
その例大祭に首相が参拝し、「総理大臣」と記帳し献花料まで出す。これは首相らの公式参拝や春秋例大祭への岩手県の玉ぐし料支出について憲法の政教分離原則に反すると断じた仙台高裁判決(一九九一年)などからみても、許されません。
小泉内閣はいま、有事法制三法案を通常国会の最重要課題と位置付け、ゴリ押ししようとしています。日本を「戦争をおこなう国」へと変えるための国家体制づくり、国民動員を狙っています。法案の中には大量の戦死者が出た場合の特例措置まで盛りこまれており、この時期の首相の靖国参拝は、有事三法案の危険性をいっそう浮き彫りにするものです。
また、日韓共催のワールドカップサッカー大会を控えての参拝強行。福田康夫官房長官は、二十一日の記者会見で、中国や韓国からの反発を指摘する記者団の指摘に、「そんなことを考えてこういうことはできない」など語りました。
ここまで、アジアの声を聞かない小泉内閣の改憲タカ派ぶりは、日本の国益をますます損なうことになるでしょう。
(小林俊哉記者)
小泉首相靖国神社参拝違憲九州・山口訴訟団の郡島恒昭団長の話
小泉首相が靖国神社を参拝するのは、いつおこなおうが、重大な憲法違反。一宗教法人にすぎない靖国神社を特別扱いし、しかも太平洋戦争を賛美する靖国神社に参拝するのは、一国の首相としてまったくナンセンスな不見識を示したもの。急に決めたというが、小泉首相は、靖国神社の春の例大祭には欠席すると伝えていた。うそをいい、人を欺くようなこずるい参拝に、首相の姑息(こそく)さを感じる。政府が、有事立法(戦争国家法案)を閣議決定したばかりのいま、戦争を賛美する靖国神社に参拝したことは、戦時中のように「お国のために喜んで死ねる」人間つくりをねらっていることをはしなくもあらわしたものだ。