2002年4月12日(金)「しんぶん赤旗」
「高見沢電機つぶしをやめろ」「団体交渉に応じろ」――。四月五日、東京・丸の内の富士通本社前。JMIU(全日本金属情報機器労働組合)高見沢電機支部の組合員約四十人が支援者とともに「存続を」と訴えました。品川区にある持ち株会社・富士通コンポーネントにも要請しました。
早朝六時に長野県佐久市から貸し切りバスでやってきました。
「不安はありますが、一歩も引けません。たたかっている限り希望があり、勝てると信じています」というのは角田篤子さん(55)。工藤光子さん(53)は「定年まで高見沢電機の社員として働きたい」と話します。
高見沢電機の従業員百人のうち女性が三十九人と半数近くを占めます。女性従業員全員がJMIUの組合員です。
柏木美喜子さん(58)は「男性組合員のみなさんが女性の権利を大切にしてくれ、産前産後休暇などを勝ちとってくれました。子育てをしながら働き続けられたのもそのおかげです。恵まれた職場でした。これからも一生懸命働きたいので、会社をつぶさないでほしい」と訴えます。
組合は、この三年間に富士通本社前で二十四回の抗議行動と十数回にのぼる要請行動をくり返してきました。
しかし、富士通と持ち株会社の富士通コンポーネントは、組合員の訴えを無視。「使用者ではない」として組合との団体交渉を拒否し続けています。この日の組合の要請にも、両社は「直接雇用関係にない」として団交を拒否しました。
高見沢電機の経営者は「毎月赤字で事業計画が立てられない。事業計画は富士通コンポーネントに聞いてほしい」といっており、当事者能力はまったくありません。
これまでの高見沢電機グループの子会社と同列の一製造子会社にされた高見沢電機。しかし、従来の子会社の製品は持ち株会社に直接納入させるのでなく、これまで通り高見沢電機を経由して納入させています。
この結果、高見沢電機全体で毎月二〜三億円の赤字がでています。子会社からは高く買い、持ち株会社には安く納めるという逆ザヤを押しつけられているからです。
勤続三十九年でJMIU支部書記長でもある井出忠義さん(57)は「持ち株会社の富士通コンポーネントが経理操作でつくった赤字を口実に高見沢電機をつぶそうとしています。富士通と富士通コンポーネントは、私たち従業員の雇用と労働条件、将来について共同使用者として責任がある」と指摘します。
JMIU支部は富士通が団交に応じないのは不当労働行為にあたるとして、昨年六月に長野地方労働委員会に救済の申し立てをしています。
「信頼できるみんなと一緒にたたかい、悔いはない」。富士通本社前で組合の仲間の輪のなかにいた塩川稔さん(56)は、そういいました。
塩川さんは三年前のリストラ攻撃のとき子会社に転籍するかどうかで迷いました。ちょうどそのころ、母親が痴ほう症になり、介護するために妻が勤めをやめた時期と重なりました。
「信州工場がつぶれたらと思い、悩みました。結局、妻にはすまないと思いましたが、やはり信頼できる仲間と一緒に最後までたたかいたいと思った」と話します。
度重なるリストラ攻撃が組合員同士のきずなをいっそう強めました。
「くり返し攻撃されても組合員全員明るくがんばっています。がんばっているから高見沢電機が今も存続しているんです。そこにみんな確信をもっています。百人が団結してたたかえば勝てるという確信です」と石井委員長は力を込めました。(中村 隆典記者)(おわり)