日本共産党

2002年4月6日(土)「しんぶん赤旗」

武部農水相問責決議案に対する紙議員の賛成討論

〈大要〉


 日本共産党の紙智子議員が五日の参院本会議で行った武部勤農水相問責決議案に対する賛成討論(大要)は次の通りです。

 賛成の第一の理由は、BSE問題での「政策判断の間違い」を犯した人が、まさに武部大臣その人であるからです。

 武部大臣は、昨年六月、BSE(狂牛病)発生の危険を警告したEUのステータス(危険度)評価を途中で断りました。このことは先日だされた「BSE問題に関する調査検討委員会報告」で、「政策判断の間違い」としてきびしく指摘されたところです。EUは、日本にもBSE発生の危険性が高いとし、肉骨粉の給餌禁止、特定危険部位の排除、調査検査体制の強化などを勧告していました。

 ところが、大臣は、「BSEが発生していない国であってもBSEの牛がいる可能性が高い」と指摘した昨年五月のEU委員会による大臣あての書簡すら無視し、わが国の評価を拒否する回答をしたのです。しかも一連のEUとのやりとりいっさいを国民に公表していませんでした。

 もし、EUの評価を受け入れて、こうした内容があらかじめ、国民に知らされ、対策がとられていたら、報告がいうように「今回の発生時に起きた大きな社会混乱は防げた可能性が高い」ことは明らかです。

 昨年九月からのBSE発生に伴う大きな混乱は、まさにこのとき武部大臣のとった態度にこそ起因するのです。大臣は辞任を要求されると、「職責を全うして責任を果たす」と居直っていますが、「政策判断の誤り」を犯した張本人である大臣にその職責にあたる資格も能力もないということは明らかではありませんか。

 賛成の第二の理由は、BSE発生を機に国民に食への不信・不安がひろがり、生産者、流通・販売業者が大きな打撃を受け、はかりしれない被害を与えながら、この事態に無責任な対応に終始しているからです。

 生産者、関連業者、消費者に耐えがたい苦しみを与え、発生後半年をすぎてもその事態は改善されてもいません。「もし自分の所で発生したら自分だけではなくて、地域全体に大きな被害を与える」と不安で、牛を出荷できない生産者、借金を新たに抱え、途方に暮れ、夜も眠れない状態です。日本の畜産はまさに存亡の際に立たせられています。店をたたまざるをえないところに業者も追い込まれています。

 先の検討委員会報告は、一九九六年、世界保健機関(WHO)から肉骨粉禁止勧告を受けながら、課長通達による行政指導にすませたことを「重大な失政」であったと断じています。まさにBSE被害は、国の失政そのものの責任であることがはっきりした以上、国は当然被害補償すべきです。ところが大臣は、自らの責任を棚上げにして、「行政指導を知らないことははずかしいとは思わないか」などと暴言したことは、大臣の無責任な姿勢を典型的に露呈したものです。

 第三の賛成の理由は、武部大臣がBSE発生の行政責任の真相究明に背を向けてきたことです。

 重大な失政であった一九九六年当時の経緯について、調査検討委員会でも解明に努力をしました。しかし、その報告では、行政指導に留めたこの意志決定は農林水産省のどの部署で、いかなる人が、どんな協議を行って決定したのか、「役所側からの説明はほとんどなく、局議の記録も存在しないとされ、きわめて不透明である」としています。

 一九九六年当時の畜産局長であった熊沢英昭事務次官から経過のいっさいを明らかにさせなかったからこそ、このような不透明な結果に終わったのではありませんか。しかも野党が予算委員会や農林水産委員会で熊沢氏の参考人招致をくりかえし要求しましたが、与党はそれを一貫して拒否してきました。そして武部大臣は、逆に、高額の割増退職金を支給するなど優遇したのです。問責は当然というべきです。

 私は食の安全と安心という国民の命よりも、自分の政権の延命を優先させるために、「一内閣一閣僚」という看板にしがみつき、失政の責任が明確な武部大臣を辞任させないという最悪の党利党略的な態度に終始した小泉首相の態度についても糾弾せざるをえません。

 あわせて指摘せざるをえないのは、連立与党の一員である公明党の態度です。党首が「武部大臣を含めてけじめをつけるべきだ」と述べたのですから、本問責決議案に賛成するのが当然です。ところがご覧の通り欠席しております。こうした態度は国民の厳しい批判を浴びるであろうことを警告します。

 農水大臣の辞任を求めながら、この本会議に欠席し、結果として本問責決議案否決に手を貸すというのは、国会はもちろん、国民から見ても理解しがたい態度ではないでしょうか。

 今政府に求められることは、武部農水大臣を罷免することです。そしてBSE発生に至った農政を深く謝罪し、野党四党が共同で提案している緊急措置法を制定し、生産者はじめ関係者への十分な補償と、徹底した原因究明と安全対策をとることです。そのことが、生産者や消費者の政治への信頼や食への信頼を取り戻していくまず第一歩です。

 


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