2002年4月6日(土)「しんぶん赤旗」
「重大な失政」が鮮明になったBSE(狂牛病)問題への対応をめぐり、日本共産党、民主党、国会改革連絡会(自由党、無所属)、社民党の参院野党四会派が共同で提出した武部勤農水相の問責決議案は五日の参院本会議で採決されましたが、国民の声を無視した自民党、保守党の反対で否決されました。公明党は、武部農水相の辞任を求めていたにもかかわらず、二十四人全員が欠席しました。記名投票の結果は、賛成百二票、反対百十四票でした。
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民主党に続いて賛成討論に立った日本共産党の紙智子議員は、(1)昨年、EUのステータス(危険度)評価を断るという「政策判断の間違い」(BSE問題調査検討委員会報告)を犯したのは、武部農水相自身である(2)国民の食への不信・不安を広げ、生産者、流通・販売業者にはかりしれない被害を与えながら、無責任な対応に終始している(3)BSE発生の行政責任の真相究明に背を向けてきた――と、その責任を厳しく指摘しました。
紙氏は、武部農水相をかばい続ける小泉純一郎首相や、本会議を欠席した公明党の態度を批判し、武部氏の罷免、野党四党が共同で提案した緊急措置法の制定による生産者はじめ関係者への十分な補償、徹底した原因究明、安全対策こそが「政治への信頼や食の信頼を取り戻していく第一歩だ」と訴えました。
自民党が決議案への反対討論に立ち、「(昨年のBSE発生後)実に短期間にさまざまなBSEに対する対策が講じられてきた」などと、武部農水相を擁護しました。
参院の野党四会派が提出した武部勤農水相問責決議案の理由(大要)は、次のとおりです。
昨年九月、千葉県でわが国初の狂牛病「BSE」感染牛が確認されたことは、わが国畜産業界のみならず、国民にとってまさに衝撃的な事態であった。その後、北海道、群馬と相次いで「BSE」感染牛が確認されるに及んで、わが国の牛肉を中心とした食の安全性に対する国民の不信は大きく広がり、生産者、流通・加工業者、小売店や飲食業者、そして消費者に甚大な影響をもたらした。
この事態は、政府及び農林水産省の重大な失態によってもたらされたものである。農林水産省はこれまで一貫して、わが国における「BSE」感染牛の発生の危険性を否定しつづけ、昨年六月にはEUから日本は「BSE」感染牛の発生の恐れが高いと指摘されながら、これを全面的に否定し、そのような評価を受けることさえ拒否した。
さかのぼれば、平成八年四月に肉骨粉使用禁止のWHO勧告を受けたにもかかわらず、行政指導にとどめたことが、今日の事態を招く原因となった。WHO勧告を受けて設けられた農林水産省の「検討会」で、専門家から相次いだ法的禁止措置の提起を無視した結果であるが、その対応に重大な責任をもつ当時の農林水産省幹部をかばい、真相究明に蓋をしたのが武部農林水産大臣である。これら、指摘に対して、「BSE調査検討委員会」の報告書にも「重大な失政」と明確に記述している。
武部農林水産大臣の「感染源の究明はそんなに大きな問題か」との暴言や、その後の「BSE問題」に関連して発生した、「雪印食品問題」では、不正の温床を放置し、そのチェックに頬かむりしてきた。このような無責任な大臣が、その職にとどまるべきではないのは当然の事であり、武部農水大臣が農林水産省の問題を克服する能力があるとは到底考えられない。このような状況を鑑み、武部農林水産大臣の罷免こそが、わが国の農林水産行政への信頼回復と「BSE」問題解決に向けて、最低限必要な措置であり、事態打開へ向けての第一歩である。