日本共産党

2002年4月5日(金)「しんぶん赤旗」

国立大学の教職員非公務員化

教育公務員特例法外しの意味

「学問の自由」「自治」揺るがす

三輪定宣


 国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議は、三月二十六日、「新しい『国立大学法人』像について」(以下、「最終報告」という)を発表し、教職員の身分は、「『非公務員型』とすることが適当である」との結論を示した。その“メリット”として、柔軟で弾力的な雇用・給与・勤務時間、優れた外国人の管理職登用や教員雇用、営利企業の役人等との兼職・兼業、職員の専門性重視の採用の四点が指摘されている。

独立行政法人化論議を振り返る

 この問題の論議のプロセスを振り返ると、大学に対する「不当な支配」の構図が浮かび上がる。文部科学省は、一九九九年九月、「国立大学の独立行政法人化の検討の方向」において、教職員の身分は、「長期的観点に立った自主的・自律的な教育研究」などの観点から「国家公務員とする」との方針を示して、各大学に独立行政法人化の検討を求めた。調査検討会議(二〇〇〇年七月発足)は、二〇〇一年九月の中間報告で、公務員型、非公務員型、大学の選択型などの意見があるが、「教育研究の中長期的視点」等を配慮して結論を出すべしとの慎重論をのべている。この間、非公務員型を主張する自民党、経団連、経済財政諮問会議、総合科学技術会議などと、それに基本的に反対する国立大学協会を含む大学関係団体・組織との“綱引き”が激化し、本年一月二十五日、閣議決定「構造改革と経済財政の中期展望について」が、「国立大学…民営化及び非公務員化を含め民間的発想の経営手法を導入」との方針を盛り込み、調査検討会議の審議が決着した。

 国立大学の教職員の非公務員化は、「法人」組織や評価システムなどとも連動し、リストラや身分不安の脅威をテコに、「法人」間競争とともに教職員どうしの競争を激化させ、長期的観点から、自治と共同により、国民や社会の利益のために教育研究に専念する体制を崩壊させることになる。

憲法・教基法の精神と対立する

 教職員の身分が公務員であることの意味を、憲法・教育基本法に照らして検討してみよう。現在、国立大学の教職員は、国家公務員であり、特に教員は教育公務員とされ、教育公務員特例法が適用されている。同法は、「教育を通じて国民全体に奉仕する教育公務員の職務とその責任の特殊性に基づき」(一条)、その身分保障を規定しており、憲法・教育基本法の精神を具体化した戦後教育改革の民主的立法のひとつである。この法律により、国立大学の教員の採用・昇任は、教授会の議に基づき学長が行い、学長は評議会が選考するものとされ(四条)、事実上、大学教員の人事は教授会が、学長の選出は大学教員の投票により決定されるなど、同法は国民の基本的人権である「学問の自由」(憲法二三条、教育基本法二条)や「教育を受ける権利」(憲法二六条)を保障する「大学の自治」の根幹をなしている。

 教育基本法は、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負」い(一〇条)、「法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。」(六条)と明記する。「法律に定める学校」には私立学校も含まれる。同条の立法措置である教育公務員特例法が、戦後、大学の国民や社会に奉仕する教育研究の発展に大きく寄与してきたことは否定できない。職員も、「全体の奉仕者」(憲法一五条)として、国民の負託に応え、教員と協力・共同して大学の目的の達成に専念するには、公務員の身分保障が重要であることは多言を要しない。

 国立大学の教職員の非公務員化は、このような憲法・教育基本法の精神と対立し、形骸(けいがい)化させ、それらの「改正」論議と一体的であり、教育研究の基盤を根底から揺るがすことになろう。(みわ さだのぶ・千葉大学教授)

 


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp