2002年4月5日(金)「しんぶん赤旗」
経済財政諮問会議(議長・小泉首相)が「税制改革の検討課題」(論点整理)を公表しました。
経済の「活力」を重視するとして、当面、法人税率の引き下げ、所得税の最高税率の引き下げと累進制の緩和、課税最低限の引き下げなどを提起しています。
竹中経済財政相によると、この二年でこれらを先行実施し、二〇〇四年度から二〇〇六年度には、基礎的な財政収支の均衡をめざして「税制改革を完成させる」計画です。
基本税率が40%台から30%に引き下げられた法人税については、経団連などが、さらにアジア諸国並みの20%台への減税を要求しています。
所得税は八〇年代後半の最高税率70%、税率十五段階から、すでに37%・四段階にまで累進構造が大幅緩和されています。それにもかかわらず、経済財政諮問会議は、「所得税の税率は法人税と比べれば高い」「累進制をさらに緩和すべきだ」などと議論しています。
一方、所得税がかかる年収の下限を示す課税最低限の引き下げは、低所得層の生計費を直撃する血も涙もない増税となります。
経済財政諮問会議が打ち出した方向は、日本の税制に残された所得再分配という民主的な機能の一掃をねらった重大な内容です。
むきだしの市場経済では貧富の差がどんどん拡大・固定化し、「結果の平等」はもちろん「機会の平等」も破壊され、やがて社会の持続そのものが脅かされるようになります。所得再分配の仕組みは、大多数の人間の命と個性を押しつぶす極端な格差の拡大を是正する、いわば資本主義社会の生命維持装置です。
だからこそ、能力に応じて負担する「応能負担」の原則が税制における憲法とされているのであり、それを具体化しているのが高所得者には高い負担を求める累進税制です。
ところが、日本の税制の所得再分配の働きは、大企業と高所得層に奉仕する自民党政治の下で、大きく後退させられてきました。いまでは欧州のみならず、アメリカと比べても累進構造が弱められています。
そのため政府税制調査会さえ「中期答申」で次のようにのべ、これ以上の弱体化を否定しているのです。
法人税は「先進国で最低」で「引き下げの余地はない」。所得税は「税制全体の所得再分配機能を維持していく」ため「今以上の累進緩和は適当ではない」―。
経済の「活力」の名のもとに、政府自身が設定したぎりぎりの“抵抗線”すら、乱暴に突破しようというのが小泉税制「改革」です。
しかも経済財政諮問会議は、「中長期的には消費課税のウエートを高めることも含めて検討すべきだ」(三月十五日の議論)と、消費税の大増税を射程に入れています。
税制の民主主義を覆す消費税の大増税こそ竹中氏のいう小泉「税制改革の完成」です。まさに強者の「活力」のために弱者を犠牲にする税制の大改悪であり、低所得層ほど負担が重く高所得層ほど負担が軽い逆進税体系の完成にほかなりません。
税制の民主的な機能の弱体化は、社会保障の連続改悪とともに、庶民の家計から「活力」を奪ってきました。それが、今日の空前の消費不況の大きな原因となってきたのです。
必要なのは税制の所得再分配の働きを再構築することです。弱肉強食を貫徹する小泉税制「改革」は、「活力」どころか、日本社会の存続そのものを危険にさらす暴挙です。