2002年4月3日(水)「しんぶん赤旗」
公金を投入する公共事業を受注した企業からの政治献金―。これこそ、「還流マネー」の代表例です。
前回の連載で小泉首相の政治資金を分析しましたが、「還流マネー」にひたっているのは、もちろん小泉首相だけではありません。
これこそ自民党の体質そのもの。そして、そのひとつの典型といえるのは、前事務所代表の佐藤三郎容疑者が脱税で起訴され、自民党を離党した加藤紘一衆院議員(元自民党幹事長)のケースです。
二〇〇〇年の政治資金収支報告書でもっとも多く資金集めをしたのが加藤氏。その加藤氏が代表の自民党山形県第四選挙区支部。企業献金が政党支部に限定された二〇〇〇年分の報告書をみると――。
公共工事にかかわる建設関係企業の献金が非常に多い。
企業・団体献金の献金総額は一億八百四十万。このうち約50%にあたる五千三百五十万円が公共工事関連の建設業界からのものでした。
選挙区の山形県酒田市や鶴岡市の企業が多くを占め、前事務所代表の佐藤容疑者の脱税にかかわったとされる企業も多数含まれています。
献金企業の顔ぶれを見てもっとも金集めに「貢献」したのは、「加藤紘一を総理大臣にする会」でした。
一九九八年五月の設立。当時、加藤議員は自民党幹事長で、その後、派閥の「宏池会」会長に就任、翌年には総裁選に出馬するという流れのなかの設立でした。
この会の設立にかかわった加藤後援会幹部は語ります。
「『総理にする会』はもともと広く浅く金を集めて地元から総理をという純粋な気持ちから始めようとした。それが、佐藤秘書の主導で、土建屋の集まりになってしまった。公共工事を受ける土建屋には金がはいるからその金に目をつけたんだ。会の参加者の選定そのものにゼネコン支店の幹部がかかわっている。なかにはゼネコンから入会を指示されてやむなく入会した業者もいる」
本紙が入手した会員名簿、四十九社の名前が政治資金収支報告書にひんぱんに登場します。最低百万円以上という年会費がそのまま自民党支部にふりこまれていました。
「総理にする会に入れば、何かいい仕事があるだろうと思った」「これで公共工事受注のじゃまはされないと思った」…。会の参加者は本紙の取材に、公共工事の受注を期待しての入会だったことを話しました。
公共工事の受注という「エサ」で金を集め、それを支部への献金に流し込む仕掛けをつくっていたのです。
いま政治に問われているのは、こうした「税金還流」の構造にどうメスをいれるのかという根本問題。しかし、小泉首相は疑惑解明も政治的道義的責任の追及も「本人まかせ」。その姿勢は醜悪な自民党政治そのものです。(つづく)