日本共産党

2002年3月30日(土)「しんぶん赤旗」

規制改革推進三カ年計画の改定

各分野の問題点をみる


 二十九日に閣議決定された「規制改革推進三カ年計画」の改定について、暮らしや経済の各分野の問題点をみてみました。


保険外自費負担の拡大推進

医療

 (1)カルテ開示など情報公開(2)医療事務の効率化と医療の標準化(3)医療費支払い側(保険者)の機能重視(4)診療報酬体系の見直し――の柱で具体策が示されています。

 医療費の伸びを抑制して国の負担を減らし、医療をもうけの市場にすることが中心テーマです。治療や検査、入院でいくら費用がかかっても決められた額しか医療機関に支払わない「包括・定額払い」制度について、「粗診粗療」を招く問題を認めつつ、入院日数の短縮化やコスト削減を誘導する経済効果に期待。実施できる医療機関の拡大を段階的にすすめるとしています。

 また全額自費負担となる保険外診療の拡大についても、患者にとって「選択肢を増やす」から合理的と評価。民間保険会社を利用した医療サービスへの要求が強まっているとし、公的医療保険の範囲の見直しを「逐次実施」するとしています。

 医療経営への株式会社の参入問題については、「民間企業経営方式などを含めた経営の在り方を検討する」とし、直接にはふれていません。

介護・保育

 介護については、競争を促進するため利用者負担の格差をなくそうというねらいから、特別養護老人ホームの入所者にホテルコスト(部屋代、水光熱費)の負担を要求。二〇〇三年四月から実施するとしています。

 保育については、待機児童が多い地域で公立保育所を中心に「定員基準の弾力化等を一層推進する」と強調。待機児童解消を理由に乳幼児の詰めこみ保育を認めています。良い保育のため国基準に上乗せした地方自治体独自の補助についても、保育サービス増加を抑制する財政的要因とみなし、「保育環境の質を下げることがあってはならない」と断りつつ、「上乗せや補助のかさ上げ」はないのが望ましいとしています。

 また公立保育の民間企業への運営委託、株式会社参入の促進は今年度から実施。保育所と利用者が直接契約する仕組みの検討を求め、直接契約の検討にあたっては保育所への補助から利用者への直接補助方式の導入の可否についても長期的に検討するとしています。

教育

 私立の小中学校がわずかしかないとして、私立の参入促進のため小中学校の「設置基準」に適切な要件を盛り込むとしています。具体例として校舎や運動場の面積基準や、他の用途の建物との共同使用をあげ、「設置基準」の緩和を打ち出しています。学校間競争の活発化によって、公立の小中学校にたいし「より良い学校づくりの契機を与える」ということを、私立参入促進の理由にしています。

使い捨ての推進方向明確に

労働・雇用

 人材(労働)分野では、派遣労働や有期雇用の拡大など、企業が必要なときだけ安い労働力を確保し、あとは使い捨てるとの財界戦略を推進する方向を明確に打ち出しました。

 雇用・労働分野の基本方針として、「就職から定年退職まで一企業で雇用を保障するのではなく、労働市場を通じて雇用を保障していく体制への移行が必要」と強調。「就労形態の多様化」のためとして、原則一年とされている派遣労働の期間制限を撤廃することとあわせ、製造業への派遣解禁の検討を表明。「可及的速やかに所要の法案を国会に提出する」としています。

 有期雇用も対象業種を拡大し、契約期間の特例の上限を現行の三年から五年に延長することを「速やかに検討」するとしています。

 「労働者がより創造的な能力を発揮できる環境を整備する」との名目で、裁量労働制の対象業務のいっそう拡大をうちだし、中長期的には、ホワイトカラー層全体に広げることを「検討する」としています。これは、労基法の定める、八時間労働の原則を解体するもので、長時間労働、サービス残業のまん延、過労死や過労自殺の多発に拍車をかけることにつながります。

 さらに、「ホワイトカラー層などの新しい労働者像」に対応した労基法の改正を速やかに検討。解雇基準やルールについても「これを立法で明示することを検討する」としています。

保護規制を軒並み弱体化

中小企業・農業

 地域産業・中小企業・農業など、日本経済の主役であるべき分野で、本来、充実・強化すべき保護規制を軒並み弱体化しようとしています。

 「流通分野」では、大規模小売店舗立地法(大店立地法)の見直しを打ち出しています。

 具体的には(1)大規模店の設置者が配慮すべき事項を定めた「指針」の見直し(2)地方自治体の独自規制を制限するため、地方自治体に同立地法の趣旨の徹底を図る――など。地域経済を破壊する大型店の進出のいっそうの横行を狙った施策です。

 「農林水産業分野」では、農産物検査の民間移行の推進や、農業経営の株式会社化のいっそうの推進を打ち出しています。BSE(狂牛病)など大きな社会問題になっている農産物検査問題への反省や、輸入農産物の急増で崩壊の危機に立たされている日本農業の再生への観点が感じられない施策ばかりです。

 その他、独占禁止法関連では大規模会社の株式保有の制限のいっそうの緩和などを、エネルギー関連では、電力小売りの「全面自由化」などを打ち出しています。これは、米国エネルギー大手・エンロンの倒産など、米国流規制緩和の失敗にすら学ぼうとしない時代錯誤の方針です。

 


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