2002年3月29日(金)「しんぶん赤旗」
静岡県浜松市職員組合の元委員長、長尾脩(おさむ)さん(63)が、組合活動を理由に昇任・昇格を抑え込んだのは不当と同市を相手取った裁判は二月下旬、静岡地裁浜松支部が差額賃金や慰謝料の支払いを市に命じる判決を出しました。市当局の差別を認定した原告側の全面勝利で、原告側の塩沢忠和主任弁護士は「画期的な判決」と評価しています。(静岡県・森大介記者)
長尾さんは一九六一年三月、大学を卒業し同市に就職。同学歴の同期生のなかでトップレベルの成績で企画課に配属されました。ところが、翌年の組合役員選挙に長尾さんが立候補すると、市当局の姿勢ががらりと変わり、異動させられます。資産税課に移ると「人口増で手が回らない」という同課職員の要求をくみあげ、増員をかちとりました。その直後に今度は農業委員会に配置転換されました。
同期生が部長級(九級)に昇任していくなか、長尾さんは九五年、勤続三十四年目でようやく係長級(五級)。そのまま九九年三月に定年退職しました。
長尾さんらは、裁判でこうした市当局の差別実態、不当性を徹底して明らかにしてきました。
その一つが、元市職委員長の梶野完治氏(現日本共産党静岡県議)に届けられた「内部告発」の投書でした。
栗原勝市長(当時)は住民と自治体職員の権利と生活を守って働く職員組合の存在を嫌い、市長いいなりの組合につくりかえようと八〇年頃にインフォーマル組織(秘密労務組織)をつくり、八二年の組合役員選挙に介入。総務部長や人事課長ら市幹部が三十人余の職員を集め、市長にくみする旧主流派候補への投票や支持拡大を強要しました。投書は、役選で旧主流派が勝利した舞台裏を暴露したものでした。
原告側は「内部告発」を地裁に証拠として提出し、差別だけでなく、組合乗っ取りのための役選介入、昇任と引き換えに組合からの脱退強要、縁故採用をくり返してきた事実を突きつけて、市当局を追い詰めました。
市当局は、これに反論できず、長尾さんの昇任が遅れたのは「能力および勤務成績が他の者より劣っていたから」と弁解に終始しました。
九八年の裁判開始当初から、支援の輪が広がりました。九十五歳になる父・友七さんは「最高裁まででも納得いくまでやれ」と激励します。
二百十点にのぼる書証資料は多くの職員が収集し作成してくれました。計十七回の口頭弁論の傍聴席は、常に長尾さんの支援者で埋まり、傍聴者はのべ一千人にも。昨年十月の結審後、裁判官に原告の勝利判決を求める署名は、一万八千四百人余から寄せられました。
判決は、「被告当局は市職(組合)を差別する意思を有していた」「被告市長の行為は故意による不法行為」と明確に断じ、長尾さんら現執行部として活動している職員についても低位に処遇する方針が相当前から採られていたとし、「九三年四月一日時点で少なくとも副参事(課長級)に昇任させるべきだった」と結論づけました。しかし市は一日、判決を不服として控訴すると発表しました。
長尾さんは「市の人事の民主化は、市政の民主化、ひいては市民の利益につながります。市民サービスを向上するうえでも、差別の是正は欠かせません」と新たな決意を語っています。
妻の博子さん(64)も、「『二人きりになってもがんばろうね』なんていってたのに。多くの人たちの支えでここまできました」と話しました。
浜松市職人事差別裁判のホームページは、「人事差別」で検索すると閲覧できます。
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