日本共産党

2002年3月28日(木)「しんぶん赤旗」

高校生引き入れ工作も

よど号メンバー元妻が証言

有本さん拉致に数千ドル


 神戸市出身の有本恵子さん=当時(23)=が一九八三年、欧州から北朝鮮に拉致されたとされる事件で、拉致への関与を認めたよど号メンバーの元妻八尾恵・元スナック店主(46)が二十七日、東京地裁で開かれた別のメンバーの妻赤木恵美子被告(46)の公判に検察側証人として出廷し、「よど号グループが拉致した日本人は有本さんら以外にもたくさんいたと聞いた」と証言しました。

 また、元妻は有本さん拉致の活動資金として数千ドルを受け取っていたことや、赤木被告らが日本人を北朝鮮に連れて行く活動をスウェーデンのストックホルムで行っていたこと、日本国内でもよど号メンバーの妻らが高校生や労働者を仲間に引き入れる工作をしていたことを明らかにしました。

 元妻はよど号グループが北朝鮮に連れ帰った日本人について、「(三人以外に)もっとたくさんいると思う。他のよど号グループのメンバーから『招待所にいる』と聞いた」と証言。

 また、元妻が有本さん拉致の活動資金として受け取った現金数千ドルは朝鮮労働党が支出。平壌やよど号メンバーが拠点を設けていた旧ユーゴスラビアのザグレブから目的地までの往復の交通費、住居を決めてからの一、二カ月分の生活費などを合計した金額だったといいます。

 さらに、赤木被告と別のメンバーの妻福井タカ子容疑者(56)=旅券法違反で国際手配=が八一年ごろ、ストックホルムで日本人獲得活動をしていたと話しました。

 日本国内での活動については、自分自身が神奈川県で高校生を、赤木被告とグループの故田宮高麿元リーダーの妻、森順子容疑者(48)=同=が大阪で若い労働者を対象に工作活動をしていたと証言。高校生を狙った理由について元妻は、将来防衛大学校に入学させ、自衛隊工作をすることが目的だったと話しました。


「全て明かす」元妻コメント

 よど号メンバーの元妻八尾恵・元スナック店主(46)の代理人の高原将光弁護士は二十七日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、「よど号グループによる拉致の被害者全員が日本に無事帰国できるよう、知っていることはすべて明らかにする」などとする元妻のコメントを発表しました。

 コメントで元妻は「家族が公表を望んでいるかどうか意思確認をした上で明らかにしたい」としています。これについて、高原弁護士は元妻が、欧州で拉致された神戸市の語学留学生有本恵子さん以外の家族にも接触し、公表の意思確認を進めていることを明らかにしました。


日本人獲得の実態を証言

 獲得対象は防衛大学校に入学させる高校生や革命を行う若い労働者―。よど号メンバーの元妻八尾恵・元スナック店主(46)は二十七日の東京地裁での公判で、メンバーの妻らが一九八〇年代に日本国内を舞台に行った日本人獲得活動の実態を詳しく証言しました。

 【経験発表】メンバーの妻赤木恵美子被告(46)と森順子容疑者(48)は大阪府の工場や喫茶店で働きながら労働者の獲得を狙った。森容疑者は八四年十二月、ザグレブの北朝鮮総領事館で開かれた経験発表の場で、「若い労働者を獲得できそうです」と話したという。

 元妻は八四年に日本に入国して以来、偽名や虚偽の経歴を使って防衛大学校に入学させる高校生を探した。神奈川県を活動の場に選んだのは、「出身地以外の場所で活動する」という朝鮮労働党の教えを忠実に守ったためだった。

 【短波放送】元妻は、短波放送のモールス信号で北朝鮮から指示を受けていた。特定の周波数で聞こえる信号を数字化し、乱数表を使って暗号を解読した。朝鮮語で数字を読み上げる方法で指示を受けている妻もいたという。

 元妻から平壌市内のよど号グループに連絡を取る場合は手紙を使った。平壌市内の架空の住所と名前を書いて郵送すると、グループのリーダー故田宮高麿元幹部に届いたという。

 【中間報告】バンコク、広州(中国)、カラチ(パキスタン)、ザグレブ、平壌…。妻らは任務の中間報告を日本以外の都市で求められていた。約束日にあらかじめ決めていた場所でよど号メンバーらと落ち合っていた。報告は短い時でも二、三日かかり、新たな任務を命じられたこともあった。日本で働いていた妻らは、休暇を取ったり仕事を辞めて報告に出向いていた。

 


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