日本共産党

2002年3月26日(火)「しんぶん赤旗」

都会で多発する餓死事件

背景に 電気・ガス・水道の供給停止

生活と健康を守る会が運動

弾力的対応 行政も変化


 小泉構造改革のもとで不況や失業が深刻化し、収入がないためにライフラインである電気、ガス、水道を止められ、死に追い込まれる痛ましい事件がおきています。「いろいろな事情で料金を滞納していても機械的にライフラインを切断しないで」―東京都生活と健康を守る会連合会(我伊野徳治会長)の運動が行政を動かし始めています。矢藤 実記者

 原因不明の死者の検死を行い死因を究明する東京都の監察医務院の調査では、二十三区内で栄養失調でなくなったいわゆる餓死者は十年間(一九九一年以降)で百九十二人、大半が五十歳以上で、ガス、電気がとめられているケースがあるとしています。

通達出させる

 東京都生活と健康を守る会連合会は、厚生労働省と交渉し、「水道、電気料の滞納があった場合は、福祉事務所などと連携を取り、適正な保護の実施」をはかる通達(二〇〇一年三月)を出させました。

 昨年十月には、東京都との交渉で、水道の給水を止める前に出す通知書に、相談先として福祉事務所の連絡先を付けさせました。しかし、電気、ガスの場合は、このような対策がとられていません。同会は日本共産党の緒方靖夫参院議員とともに経済産業省や東京電力、東京ガスと交渉を続けてきました。

 二月の経済産業省資源エネルギー庁との交渉で同庁は、生活困窮者に画一的な対応をとらないよう電力会社やガス会社に要請する文書を出す意向を示しました。

柔軟な対応を

 十九日に開かれた参院経済産業委員会で、日本共産党の緒方議員は、厚生労働省が実態を把握していないので、独自に調査したと前おきして、東京、大阪、神戸の監察医事務所の調べで栄養失調死が五年間に二百八十九人にのぼっていることを示しながら、多くが電気、ガス、水道をとめたなかで起きていると、指摘しました。

 緒方議員は、電気・ガス事業者の供給規定(内規)では、生活保護世帯や申請中の世帯、一人ぐらしの高齢者の場合は「面談や電話での接触がとれるまで供給を停止しない」としていることを明らかにして、「生活困窮者にたいし柔軟な対応を」と要求しました。

 これにたいし平沼赳夫経済産業相は、「柔軟に対応し、文書をつくることを含めて(関係機関に)要請する」と回答しました。

都も協力依頼

 東京都は二十五日、東京ガスの料金センター所長にたいして、生活困窮者が窓口に相談にきた場合、「所管の福祉事務所に相談に行くようにすすめてほしい」との協力依頼を送ることを明らかにしました。東京都生活と健康を守る会連合会がすすめてきた運動の成果です。

 協力依頼の内容は、(1)都民が真に困窮した生活状況を訴えた場合には、所管の福祉事務所へ相談に行くようにすすめてほしい(2)都民から生活困窮を訴えられたり、相談依頼を受けた場合で、福祉事務所を紹介しても本人が出向くことが困難と思われる場合は、所管の福祉事務所に連絡していただきたい(3)福祉事務所から貴社窓口などに生活保護制度のパンフレットなどを備えつけたい旨の依頼が合った場合には、協力していただきたい。


ガス止められ…都内の女性の場合

 東京都内に住む高木暁子さん(36)=仮名=は、料金を払えず、ガスを止められてしまいました。

 ◇

 私は、過労で病気になり昨年十月、退職しました。夫とは離婚。高校、中学、小学生の三人の子どもがいます。収入がなくて九月分の家賃も、電気も、ガスも、水道代も払えませんでした。

 ガスが止まったのは、昨年十一月初旬の寒い日でした。唯一の暖房器具だったガスストーブが使えず鉄筋コンクリート造りの公団住宅の冷え込みは、身にしみました。「次は電気、その次は水道も止められる」と、思い悩みました。

 ガスが止められた翌日に、福祉事務所に相談に行き、「料金は、必ず支払うので、ガスを止めるのは少し待ってほしい」と話しましたが、「ガスは止まっているので、料金を支払わない限り無理でしょう」といわれました。

 せっぱつまった気持ちで、これまで相談にのってくれていた息子の高校の先生に電話しました。その先生から「生活と健康を守る会」を紹介されて生活保護を受けて、ガスが使えるようになりました。

 今思うのは、生活が一つ狂いだすとドミノ倒しみたいになってしまいます。最後はゲームオーバーっていう感じでした。支払いが滞り困ったときに、すぐに相談にのってもらえるような条件をつくってもらいたい。


 東京都生活と健康を守る会連合会の我伊野会長の話 小泉不況で厳しい生活を強いられている国民が、料金を滞納したからと一方的にライフラインを切られることは生死に直結します。生きる権利のはく奪につながり放置できない問題です。機械的な供給停止をさせないため、滞納者の実態に即した弾力的な対応をとるべきです。

 


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