日本共産党

2002年3月21日(木)「しんぶん赤旗」

大企業が狙う超V字型回復

リストラ推進、身勝手な収益改善


 減益は二〇〇一年度一期限りの「超V字型」利益回復へ――電機メーカーなど大企業は、人件費削減を軸にしたリストラで、〇二年度に企業収益の大幅な改善をはかろうとしています。


しわ寄せは労働者、下請けに

01・02年度収益見通し

 野村証券金融研究所によると、主要企業(金融除く三百四十五社)の〇一年度の連結決算ベースの経常利益の見通しは、前年度比44・6%減と歴史的な大幅減益となります。企業収益の減少の理由は、「景気悪化のスピードが従来の常識では考えられないほど速かった」ことと、「多額の構造改善費用の計上」です。

 不採算部門からの撤退や過去に例をみない規模での人員削減に伴う経費がふくらみ、〇一年度決算では、大手総合電機メーカーを中心に一社当たり数千億円規模での特別退職金や「構造改善費用(設備除却等にかかるコスト)」が計上される見込みです。

 これが、〇二年度になると、連結経常利益の前年度比の予想増益率は56・1%と上方修正されます。理由は、円安メリット、米国景気の回復予想に加え、いわゆる「リストラ効果」が〇二年度に顕在化するという見方です。

リストラ赤字理由にまた…

 大和総研も主要企業(金融を除く三百十社)の連結経常利益は、〇一年度が43・2%の減益。〇二年度は同56・3%増益で「超V字型」利益回復を予想しています。

 〇一年度の大幅減益は、リストラコストの積み増しが主因。経常利益予想額八兆九千億円弱にたいし、特別損失予想は五兆九千億円。電機を中心にリストラ関連費用の計上が大きいという見通しです。一転して〇二年度に利益が回復するのは、リストラ関連費用の減少と「リストラ効果」の発現が原動力になるとしています。

 日立製作所は、今年三月期の最終赤字が従来予想を二千五百億円上回る四千八百億円に拡大すると発表しています。

 下方修正の理由は「リストラ費用」の拡大です。半導体事業の国内外拠点の再編など「事業構造改善費用」約千三百四十億円、特別退職金等千四百六十億円を計上しています。

 リストラで赤字がふくらんだことを理由に、〇二年度では人員削減計画を追加し、〇二年六月末までに二万九百三十人(国内一万五千百人、海外五千八百三十人)を削減。資材調達コストは〇三年三月までに二割削減する計画で、〇二年度は約六千四百億円のコスト削減を見込んでいます。

 これらの「構造改革効果」で〇二年度の業績の「V字回復」を図るとしています。春闘でも賃金を一年間5%カットを提案するなど、労働者いじめで「収益改善」をもくろんでいます。

 リストラにかかる経費を数年先の分までまとめて赤字として計上し、来期に「V字回復」をはかる会計処理は「ビッグ・バス(大きな風呂)方式」と呼ばれています。「一気に“あか”を落としてさっぱりするという意味」(「日経」二月二十五日付)です。

最高益でもベアはゼロ

 一方、自動車は「(〇一年度は)過去最高益」(野村証券)「〇一年度は大幅増益、〇二年度は〇一年度以上の大幅増益」(大和総研)を予想。大和総研は、円安による為替メリットに加え、業績が低迷していた企業も〇二年度には「リストラ効果」が本格的に発揮されるとしています。日産自動車は20%の購買コスト削減が三月で達成する見込みとして、四月からの三年間で新たに15%削減するという目標を発表。トヨタ自動車は、〇一年度の経常利益が過去最高の一兆円に達する見込みなのに、春闘ではベースアップなしの「ゼロ回答」。自動車産業も労働者や下請けにしわ寄せする徹底したコスト削減策で、もうけを拡大させようとしています。

 


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