日本共産党

2002年3月18日(月)「しんぶん赤旗」

大型車タイヤ脱落 防止策は十分か?

現状は“ユーザーまかせ”

専門家指摘 分解点検の義務づけ必要


 横浜市で三菱自動車工業製のトレーラーけん引車の前輪が外れて、歩道を歩行中の主婦(29)を直撃し死亡させた一月十日の事故から二カ月余。その後、大型車のタイヤ脱落事故が頻発、危険が放置されてきたことが明らかになりました。大型車のタイヤ脱落防止対策はどうなったのか、見てみました。

 三菱自工は販売店を調査した結果、車輪と車軸を固定する部品・ハブの破損が、一九九二年以降四十件、タイヤ脱落事故が三十四件あったと発表。大型車、十二万四千台の無償点検・交換を実施中です。この自主点検措置に要する費用は三十五億円で、ハブ増産のための専用ラインを川崎工場内に増設、販売店へ人員を派遣するなど点検体制を強化しています。

 今後の対策として同社は、ハブを「十二カ月点検メーカー推奨点検項目」に加え、新たな点検要領を整備工場に周知徹底するとした、再発防止策を国土交通省に提出しました。

 同社は「ハブ破損の原因は整備不良にある」として、設計・製造上の欠陥ではないと強調、リコール(無償回収・修理)とはしていません。

 「メーカー推奨点検項目」とは、あくまでもメーカーが独自に点検すべきと判断した項目という意味で、整備工場に点検義務を課すものではありません。点検するかどうかは、ユーザーの選択に委ねられています。

 国土交通省リコール対策室は、他の大型車三社(日野自動車、日産ディーゼル工業、いすゞ自動車)で、「三菱と同じハブ破損はなかった」として、ハブを定期点検項目に加えることはしないといいます。しかし、ハブベアリングの不具合によるタイヤ脱落が起きていることから、「ハブベアリングの焼き付け防止の取り組みを、自動車工業会を通じて周知徹底する」としています。

 これでタイヤ脱落は防止できるのでしょうか。

 東名高速道路(大井松田〜清水)で事故・故障車の救済にあたる「日本ハイウエイセーフティ研究所」(静岡・沼津)の加藤正明所長は、同区間と周辺一般道の十年間(一九九二年から)で、三菱三十八件、日野三十六件、日産二十一件、いすゞで六件、タイヤ脱落事故が起きていることを示し「タイヤ脱落事故は全メーカーで頻繁に起きている」と警告します。

 同氏は「ハブの異常は『分解』点検をしないと分からない。車検の時に分解点検をすることが常識だが、実施されていないのが現状だ。点検項目に書き加えた程度で再発防止になるのか」と疑問を投げかけます。

 整備関係者は「車検時の点検で、ハブ自体を外すことはない。ホイール、ブレーキ・ドラムと一体で外し、ボルトや亀裂を確認して終わるのが普通だ」といいます。

 加藤氏は「規制緩和で車検も自由競争になり、ユーザーがより安いところで車検を受けようとするのがあたり前だ。しかし、手間暇かけて部品の分解までしてくれるところの値段が安いはずはない」として、「ハブの故障原因をきちっと列挙し、分解点検を法的に義務付けるべきだ」といいます。

 


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