日本共産党

2002年3月14日(木)「しんぶん赤旗」

CS放送 朝日ニュースター

志位委員長語る

鈴木疑惑──追及の到達点と今後


 日本共産党の志位和夫委員長は十三日、CS放送朝日ニュースターの「各党はいま」に出演し、鈴木疑惑について、峰久和哲朝日新聞政治面編集長の質問に答えました。

証人喚問で疑惑はいよいよ深刻に──鈴木議員の言い訳は通らない

 峰久 週はじめの鈴木宗男さんの証人喚問、どうごらんになりましたか。

 志位 鈴木議員の疑惑が、きわめて深刻になったというのが、全体の結果だと思います。

 「北方四島」の支援事業について、鈴木議員は「ムネオハウス」と桟橋については、入札への関与を認めたわけです。ただ、そのさいに、二つの言い訳をやったわけですね。

 第一は、「領土返還運動の理念にもとづいて」自分は行動しているんだという言い訳でした。

 第二は、「返還運動の原点である根室を重視している」という言い訳をして、ごまかそうとした。

 しかし、両方とも成り立たない言い訳だというのが、たいへん明りょうになったと思います。

 峰久 どういうことですか。

「根室を重視」というより「自分の後援企業を重視した」のが真相

 志位 第二のほうからいいますと、「根室を重視した」のではなくて、「根室にある自分の後援企業」を重視してきた。これが真相だと思うのです。

 わが党の佐々木憲昭議員が、入札にかかわって「特定企業の名前が出たか」と尋問したことにたいして、(鈴木氏は)「記憶にない」とか、「認識にない」とかの繰り返しだったわけですけれども、あの入札要件に該当する企業を、私たちが調べてみますと、九九年までの五年間で、根室管内で、三十六件の官公庁の事業を受注した渡辺建設(工業)しかなかったわけです。

 そして、その渡辺建設から献金をもらっている。しかも、「ムネオハウス」をつくった九九年は、二百五十万円と例年より多い献金をもらっている。そういう関係にある会社を「知らなかった」とか「認識がなかった」というのは、およそ成り立たない議論です。

 ですから、「根室を重視した」というよりも、根室の渡辺建設工業という「自分の後援企業」を重視した、そこに受注を落としていったというのが真相だと、これが第一点です。

「領土返還の理念」でなく「鈴木議員の利権」が「原点」だった

 志位 もう一つ、「領土返還運動の理念を重視した」というのですが、外務省の九五年六月十三日の文書ですけれども、ここで鈴木宗男議員が、「実際には島が返還されても国として何の利益にもならない」、「領土返還要求を打ちきって、四島との経済交流を進めて行くべき」という、領土返還否定の発言をしていたというのが出てきたわけですね。「領土返還運動の理念を重視」どころか、「返還なんかしなくてもいいんだ」ということを公然といっていたということが記録に残っていて、これは外務省も認めました。

 それでは、その「四島との経済交流」としてやられたのはなにかといえば、はしけ、桟橋、「ムネオハウス」と、鈴木議員が利権をむさぼってきた事業の数々が「経済交流」としてやられたわけです。

 ですから、「領土返還運動の理念」ではなくて、「鈴木宗男議員の利権」が「原点」になって動いていたというのがことの真相だった。

 二つの言い訳をしたのですけれども、まったくこれは成り立たないという事態になったというのが、あの証人喚問だったと思います。

 とくに最初の問題についていいますと、「知らなかった」ということは、考えられないことであって、偽証の疑いがきわめて強い。ですから、私は、そういう問題もふくめて、衆参での鈴木議員の再喚問がどうしても必要になりますし、議員の資格とも両立しないですから、議員辞職を強く求めるということをいいました。

鈴木疑惑は「底なし状態」再喚問での徹底究明が必要

 峰久 再喚問はまず、参議院でやりますか。それとも衆議院ですか。

 志位 それは、国会の運営の問題ですから、それぞれが努力すべきだと思います。参議院でも、当然やるべきだと思います。

 衆議院でも、この前の喚問は、外務省とのかかわりに限定するという条件つきでした。しかも、時間も短いですから、どうしてもやり残した問題もある。その後明らかになってきた問題もある。外務省だけではなくて、防衛庁がらみの問題、国土交通省がらみの問題、「省庁横断」で疑惑があるわけですから、そういう意味でも、衆議院でも再喚問が必要だということをいいたいですね。

 峰久 喚問のあり方ですが、あまりに時間が少ないという感じがします。

 志位 時間は十分とってやるべきです。ロッキード(事件)のときは、三時間、四時間コースという、かなり長い喚問をやっています。喚問の時間的な保障ということも、当然必要です。もっと聞きたいことはたくさんありました。

 たとえば、これは他党が尋問した問題ですけれども、非常に重大だと思った問題は、二〇〇〇年にコンゴの臨時代理大使がやってきた。この新任の駐日大使にたいして、IDカードを請求したのに出さないということを、ムルアカさんという(鈴木議員の)秘書がかかわって、鈴木議員自身も「これは(大使として)適当と思わない」という発言をして、関与して、(IDカードを)出さないということをやっているわけです。これは、外交上とうてい許されない、条約違反になるような大失態ですし、先方の国に謝罪しなければならないような性格の問題です。

 鈴木議員をめぐる疑惑は、「底なし状態」で、たくさんの疑惑があるわけで、とてもあれだけの時間で解明しつくせるような内容ではありませんから、そういうこともふくめて、徹底的な究明がこれからも必要です。

領土返還より利権を優先──日ロ外交上の重大問題に

 峰久 いまご指摘のあった北方領土問題に関し、ひじょうに大きな問題は、たんに鈴木宗男さんという一議員のスキャンダルという話ではなくなっているということです。まさに日ロ関係そのもの、日ロ外交上のひじょうに大きな汚点になったのではないか。またそれをみすみす許してしまった外務省は何をやっていたのか、そんな感じを持つのですが。

 志位 その通りですね。私たちは領土問題については、北千島をふくめて、千島列島全体を返還すべきだという立場にたっていますが、少なくともこれまで政府がとっていた「四島一括返還」という方針にてらしても、鈴木議員が立っていた立場、やっていたことの疑惑は、ひじょうに深刻なものです。

 立っていた立場というのは、「領土なんか返ってこなくてもいい。経済交流を進めていくべきだ」といって、領土返還よりも自分の利権を優先させる立場に立っていたわけです。

鈴木議員とロシアとの会談記録の提出を
 ――疑惑解明ぬきに領土交渉を進められない

 志位 こういう人が、政府の特使などの形で何度もロシアにいって、相手国の要人と会談をやっている。きのう(十二日)、わが党の小池議員が、そういう人物が(ロシアと)会談しているとしたら、何をいっているかわからない。だから、全部の記録を出しなさいと、総理、外相にそれぞれただしたのですけれども、出すといわない。しかし、これは出すべきです。

 外交というのは、表に出ないものが必ずあるわけで、その場で鈴木さんが領土問題でどういう発言をしていたのか、政府の特使としていっていれば、日本政府のメッセージとして伝わりますし、政府の特使という立場でない場合であっても、有力議員といわれている人がいけば、これは日本政府の意を体してきたと伝わります。いずれにせよ、鈴木さんがロシアと接点があるところでどういう発言をしてきたのか、出すべきです。

 この疑惑を解明しないで、領土交渉を前に進めることはできないという、深刻な問題になったと思います。

 きのうの答弁を聞きましたら、それを出すと、総理もいわないわけです。「政府の方針は『四島一括返還』です。それでやっているはずです」と外務大臣は答える。「やっているはず」だといっても、本人は、「返ってこなくていい」という認識で動いているわけです。ロシアを相手に国益をそこなう発言をやっている可能性が十分にあるわけです。

鈴木議員一人の問題で、幕引きをはかることは許されない

 峰久 いまの政府・自民党、小泉政権がこの問題をどう収めようとしているのか、そしてその収め方について、どうごらんになっていますか。

 志位 与党の態度をみますと、この問題は鈴木さん一人の問題だ、特異な議員がいて異常なことをやった、だからしかるべき処置をして、「離党」なりなんなりの「けじめ」をつけて、ことを終わらせようという態度があらわれていますけど、これは許されない態度だと思います。

自民党の政官業癒着の体質が象徴的にあらわれた問題

 志位 いくつかの問題があると思いますけど、一つは、鈴木議員の問題というのは、まさに自民党の体質の象徴があらわれた問題だと思うのです。突出して、異色ではあるけれども、まさに自民党の体質そのものが、鈴木宗男議員という人にあらわれた。

 鈴木議員がやってきたことは、自民党の族議員といわれる集団が、多かれ少なかれ手を染めてきたことです。つまり、業界団体から要請を受けて、行政をねじまげる。官僚機構を政治力という圧力でねじまげる。その見返りに献金をもらう。だいたいこれは、多くの自民党議員、族議員が程度の違いはあってもやっていることです。

 しかも、鈴木議員が集めたお金にしても、この三年間とってみましたら、九八年からの三年間で二億四千万円を(他の議員に)配っているわけです。配った議員が自民党五十七人、公明党が一人。五十八人の議員に「ムネオマネー」が配られているわけです。橋本派にたいしても入ってます。

 峰久 上納しているんですよ。

 志位 そうですね。こうやって、お金ばらまいて、自分の地位を高めるということをやっていたわけです。「ムネオマネー」をもらった人がたくさんいるわけですよ。その「ムネオマネー」というのは、ひじょうにうさんくさいやり方で集めたお金です。ですからそういう「ムネオマネー」をふところにいれておきながら、問題が起こったらともかく鈴木さんに一人辞めてもらって、フタをしましょうというのは、これは通らない話です。自民党のこういう腐敗体質の全体が問われているということを強調したいですね。

 峰久 お金をたくさん集めて配って、上納して党内での地位を高めていく。田中角栄さんもそうでしたし、そういった伝統が綿々と…。

 志位 田中さん、金丸さん、竹下さん、こうした自民党のまさに「伝統」を、極端な形で体現した人物が鈴木さんだったということですね。

中央省庁の癒着体質、隠ぺい体質、腐敗体質が問われている

 志位 二つ目は、中央省庁の癒着体質、あるいは隠ぺい体質が、丸ごと問われていると思うのです。いま外務省と鈴木議員の関係が問題になって、「異常な関係」だということになったわけだけれども、それでは鈴木議員一人がいなくなったら外務省はきれいなりっぱな役所になるのかといえば、そうではないですね。

 たとえば、今度の外務省の出した報告を見ましても、私たちが証拠をつきつけて、逃れられない問題については、しぶしぶ資料を出すけれども、隠しおおせると自分が判断した問題は最大限隠すというのが、今度の調査報告書です。

 たとえば、「ムネオハウス」の入札関与問題でも、一般競争入札をした、六社が(入札説明会に)きたということを書いてあるのだけれど、わが党の筆坂(参院)議員が追及したら、結局、そのうち四社は入札資格がない。結局、渡辺建設工業と犬飼工務店というジョイントベンチャー――落札したところしか資格がないということがわかって、競争の形をとったけれども「偽装」だった。報告書も「偽装」だったという代物なのです。

 わが党の小池参院議員が質問しまして、新しい事実がわかったのですが、「希望丸」という、はしけがありますね。その入札の経過についても、これは根室造船というところに落ちているんだけれども、落ちた経過がひじょうに疑惑につつまれていた。もともと根室造船が請け負えるような規模の仕事ではないんですね。もっと大きな規模の仕事なんです。その経過がどう見ても説明つかない。それで、外務省を追及したら、「根室造船が念頭にあったということをうかがわせる手書きの文書がある」という。そういう文書まであって、鈴木さんの圧力がらみで、ことが起こっているということは、もう「まっ黒」なのに、事実を明かそうとしません。

 こういう癒着体質、隠ぺい体質、腐敗体質、これは鈴木さん一人がいなくなったらなおるというものじゃないんですね。これは根底からなおさないといけない。

小泉首相の姿勢
 ――疑惑解明は他人まかせ、企業献金、機密費にはフタ

 志位 そのこととの関係で三つ目は、小泉首相の姿勢が問われていると思います。

 一連の疑惑が出ますでしょう。わが党が独自に調査して疑惑が明らかになる。すると、首相は「調査する」というんですよ。けれど、その調査は、外務省にさせます、防衛庁にさせますというように、省庁に「丸投げ」で調査させますというんですね。ところが、省庁と鈴木議員は共犯で結託して行政をゆがめているわけでしょう。共犯者に調査をさせるというのだから、まともな調査にならないわけです。首相がみずから調査しようとしない。これが首相の姿勢としてひじょうに問題です。

 いまいった自民党の腐敗体質、省庁の腐った体質をなおそうと思ったら、企業献金をやめる、天下りをきっぱり規制する、首相の姿勢として、そこに踏み込まなければいけないのに、これにたいしては後ろ向きです。

 それから、今度の問題でも、税金の不透明な使い方が問題になったわけです。「支援委員会」というのをつくって、どこで要求があって、どこで決めて、どこでことがおこなわれたのか、まったく不透明のままお金がどんどん出ている。この税金の不透明な使い方が問題になったけれども、不透明ということでいうならば、機密費ほど不透明なお金はないと思うんですよ。

 あの問題で、去年、私と筆坂さんと連携の追及をやりました。外務省から内閣官房に上納されているという問題、それが国会対策とか野党対策につかわれている、そういう問題もふくめて明らかにしたのですけれども、こういう問題にもいっさいフタをする。

 企業献金にもフタ、機密費にもフタ、疑惑の核心部分には全部フタをして、逃げ切ろうというのが首相の姿勢で、そういう点では、「小泉改革」の正体はひじょうによく見えた。これだけ疑惑がありながら、みずから本気になって調べようとしない。そして、腐敗の一番の大もとの企業献金なり、機密費なり、こういうことに切りこもうとしない。これでどうして「改革」といえるのか。

加藤疑惑──「秘書がやったことは知らない」はおよそ通用しない

 峰久 いま自民党は火種をもう一つかかえていまして、金庫番が脱税で逮捕された加藤紘一さん。鈴木宗男さんとちがってクリーンだといわれた人だし、総理候補だともいわれた人です。加藤さんの問題についても共産党はいろいろ下準備をしているところでしょうか。

 志位 これも徹底的にやっていきたいと思っています。加藤議員についても、構図は同じような構図で、公共事業を食い物にして、そこから吸い上げてきた。

 いろいろな報道がありますけれども、“加藤税”だとかいって、公共事業の受注額の数%を上納させていたというような仕組みも報道されています。金丸さんのときと同じですね。あのときも何%という形で上納していた。そういうふうにしなければ公共事業がとれない関係をつくっていたということですね。

 秘書がやったということですけれども、秘書のバックに加藤議員の政治力があってことがおこなわれているわけで、「秘書がやったことは知らない」ということはおよそ通用しない話ですね。たとえば、佐藤(元)秘書がやっていたことで、加藤議員の自宅を建てろ、そうでなければ献金を出せということをやってたという報道がありましたね。あんなことを本人が知らないはずはない。それから、加藤議員の夫人が弔辞を読んだ。秘書がその謝礼を要求したという報道もありますね。ああいうことを本人が知らないはずはない。これも、本人がきちんとまず、証人喚問に応じるべきですし、きびしい政治責任をとるべきですね。

 峰久 最後に、こんなスキャンダルまみれの国会で、大事な問題が審議されないというのはとても残念です。

 志位 これは同時並行でやっていくべきだと思っています。いまの不景気の問題、医療の問題、いますすめられようとしている有事法制の問題、さまざまな国政上の重要な問題は同時並行ですすんでいるわけですから、この問題はいろいろな形で、いろいろな場をつかって明らかにしていきたいと思います。

 


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