日本共産党

2002年3月11日(月)「しんぶん赤旗」

官房機密費から口利き政治へ

加藤マネーの10年

金庫番秘書切れなかったわけは…

与野党議員へ広く深く


 “金庫番”の元秘書が脱税容疑で逮捕された加藤紘一自民党元幹事長は次期総理総裁候補から一転、自民党離党も迫られ、政治生命を絶たれかねない剣が峰に立たされることになりました。

 総理総裁の座を視野にいれた加藤氏のこの十年をたどると、官房長官当時の内閣官房機密費を使った“加藤政権づくり”のための政治資金バラマキに端を発していた疑いが浮かび上がってきます。

 内閣官房機密費の乱費を通じて与野党へ影響力を広げたものの、膨らんだ政治資金をまかなうために無理な資金集めに走り、金漁(あさ)りが巧みだった金庫番秘書を切れなかった――という構造が明らかになります。加藤金脈事件の本質は、旧来型自民党の金にまみれた権力争奪そのものでした。

克明な出納記録

 永田町に“加藤マネー”といわれる政治資金が流れ始めたのは十年前、一九九一年十一月五日、加藤氏が宮沢喜一内閣の官房長官に就任した後のことです。日本共産党を除く各党衆参国会議員や高級官僚へパーティー券、国対費、餞別(せんべつ)などの名目で「内閣官房長官 加藤紘一」名で金がばらまかれました。

 B5判の金銭出納帳一冊分のコピーがあります。加藤官房長官就任から、宮沢内閣改造で官房長官を離れ、自民党幹事長代理になる九二年十二月十一日までの十三カ月間にわたり、加藤事務所関係者を通じた支出の内訳が記されています。

 パーティー券77件 5058万円

 国対関係17件 2521万円

 餞別20件 2043万円

 香典21件 243万円

 手当18件 3050万円など

 総額で1億3600万円にのぼります。

 パーティー券購入のなかには、次のような記述もあります。「九二年三月三十日 中曽根康弘出版記念三十万円 四月三日 尾身幸次(現沖縄北方担当相)パーティー五十万円 九月二十八日 川崎二郎(元郵政相)パーティー二百万円……」。自民党議員のほか、社会党ニューウェーブの会百万円や現民主党国会議員のパーティー券を購入した記録もあります。

 国対関係では「九二年十一月十四日 英国屋(公明党議員三人の名) 百六十万五千円」「十一月十五日 民社党幹部の名(英国屋)五十三万五千円」「十一月二十六日 英国屋(公明党参院議員の名)百万円(未払 支払)」などとあります。

 英国屋とは東京銀座の高級紳士服店です。支出の中身は仕立て券付き背広代です。

 “加藤マネー”は与野党国会議員、国対関係者に広く配られていました。

 加藤氏が、野党にも太いパイプをつなぐ自民党ニューリーダーの位置を固めた時期でした。

収支ほぼ一致

 もう一つ、“加藤マネー”を証明する内閣官房用箋(ようせん)のコピーが十数枚あります。用箋は「内閣」の名入りで、昨年、内閣官房機密費をめぐって日本共産党の志位和夫委員長が国会で示した古川文書(古川貞二郎官房副長官)と同じ、内閣官房で使われる用箋です。加藤官房長官から加藤氏の出納担当秘書が受け取っていた金の収支を示す記録です。

 「(長官より)平成三年十一月十四日 三百万円 十五日 三百万円 二十七日 五百万円 小計千百万円」

 「同十二月九日 三百万円 二十日 二千万円 二十五日 二百万円 小計二千五百万円」……九二年十二月まで月ごとに書かれています。

 その総額は一億四千三百万円にのぼります。

 先の金銭出納帳とつき合わせると、収支がほぼ一致します。

 当時の“加藤マネー”の資金源が内閣官房機密費である疑いが濃厚です。

政権とりへ資金

 自民党は九三年総選挙で野党へ転落し、九カ月後の九四年七月に自社さ政権で政権へ復帰しました。同時に加藤氏は自民党政調会長として初の党三役入り。翌九五年に幹事長に就任し、総理総裁をめざして本格的に動き出しました。

 内閣官房機密費を政治資金に流用したことで、加藤氏自身の政治資金は膨らんだものの、閣外にいる加藤氏は、こんどは必要なだけの政治資金をすべて自前で集めなくてはなりませんでした。

 それまでの政治資金担当の秘書を解任し、九三年後半から今回逮捕された佐藤三郎元秘書が加藤事務所に入ったという経過は、加藤氏が従来以上に金集めの必要に迫られていたからにほかなりません。

 佐藤元秘書は公共事業の口利きを通じて政治献金を巻き上げ、後援会誌を創刊し、広告料名目でも献金を集めるなど“らつ腕”を振るい、加藤氏の政治資金管理団体・社会計画研究会は最近五年連続して四億円以上の政治資金を集めました。

 加藤氏は佐藤元秘書の逮捕をうけて「国民の皆さんへの説明責任を強く感じている。公の場で説明する努力をしたい」(八日)と表明しました。官房長官当時の内閣官房機密費の使途を含め、疑惑の全容を国民に明らかにする責任があります。

 


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