日本共産党

2002年3月5日(火)「しんぶん赤旗」

購買力平価ってなに?

けいざい そもそもワールド


 所得税の課税最低限(税金がかからない最低限の年収)や賃金の国際比較などで、「購買力平価で比較すると……」という分析が最近、よく出るようになりました。そもそも購買力平価とは何か―。これを調べました。(今田真人記者)

買う力でみた通貨の交換比率

 購買力平価を日本で計算している官庁は、内閣府(旧・経済企画庁)です。東京・千代田区の同府庁舎を訪ねました。

 応対してくれたのは、国民生活局総務課調査室の井内正敏室長ら。井内さんは「購買力平価とは、それぞれの通貨の購買力(商品を購入する力)が等しくなるように計算した各国通貨の交換比率のこと」と説明します。

 例えば、日本の通貨「円」と米国の通貨「ドル」の購買力平価を考えます。同じ品質、あるいは、同じサービスのAという商品が、日本では三百円、米国では二ドルで買えるとします。この商品Aの購入に関して三百円と二ドルは同じ購買力があるとするわけです。

 この関係を一ドル当たりで示したものが購買力平価の一般的表記です。この例では、一ドル=一五〇円(三百円割る二ドル)と表します。

 商品Aの代わりに「一世帯の生計を営むために必要な商品・サービスが、同じ種類、同じ量だけ入った買い物かご(マーケットバスケット)」を考えます。この買い物かごに入った商品・サービスの各国通貨での値段の合計を比較すれば、生計費についての購買力平価が求められます。これが、旧・経企庁(現・内閣府)が一九八八年以来、毎年作成している「生計費ベースの購買力平価」です。

一般的なのはOECDの統計

 ところで、購買力平価は、日本の内閣府が作成しているものだけではなく、OECD(経済協力開発機構)も作成しています。OECDは国際機関ですから、この方が一般的普遍的なものとして、広く使われています。

 OECDの購買力平価はどのように決められてきたのかも調べてみました。

 もともとは、EC(欧州共同体、一九六七年発足、後のEU)が各国の加盟分担金の算出を目的に作成し始めたということです。分担金を決めるには、加盟国のGDP(国内総生産)を適正な共通尺度で評価する必要があります。その尺度が購買力平価とされました。その後、OECDが独自で作成するようになり、一九八〇年から公表されるようになりました。

 ただし、OECDの購買力平価は、GDPを構成する生産物・サービスについて、一定の種類・量だけ、先の例の「買い物かご」に入れると想定して、その値段(価格)の合計を各国通貨表示で比較するという手法で算出します。これを「GDPベースの購買力平価」とよんでいます。

為替レートより経済実態に近い

 内閣府の井内さんは、購買力平価の利点について「外国為替市場の為替レートは、貿易などの国際的取引の影響や、投機による変動が多い。購買力平価は、そういう影響・変動を除き、より経済実態に即した各国比較ができる」と話します。

 とくに、日本の通貨「円」の為替レートは、購買力平価と比べて、著しく円高方向にぶれてきました。例えば、二〇〇〇年平均では、OECDの購買力平価は一ドル=一五六円ですが、為替レートは一ドル=一一五円です。

 このため、日本の課税最低限や賃金など国民の生活水準が、為替レートの国際比較では、実際よりかなり高く表現されてしまいます。

 国民の生活水準切り下げを狙う政府や財界が、好んで為替レートでの国際比較を使い、購買力平価を使わない理由は、どうやら、こんなところにありそうです。

 


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