2002年3月5日(火)「しんぶん赤旗」
「自分を中傷するような人物は適当ではない」――。四日発表された外務省調査報告書で、自民党の鈴木宗男衆院議員が他国の外交官の“人事”にまで口を出し、それに外務省が強い影響を受けるという驚くべき実態が明るみにでました。
問題の発端は二〇〇〇年五月、駐日コンゴ臨時代理大使の交代でした。それまでの臨時代理大使は、鈴木議員や同議員の秘書、ムルアカ氏と親しいヌガンバニ氏。新しく任命されたのはヌグウェイ氏でした。
外交関係に関するウィーン条約では、臨時代理大使の任命については受け入れ国の同意の必要はなく、派遣国からIDカード(外交官等身分証明票)の通告があった場合ただちに発給しなくてはなりません。しかし…。
同年八月中旬、鈴木議員は中近東アフリカ局参事官にこう語りました。
「臨時代理大使が代わるという話を聞いたが、新しい臨時代理大使は外交官の経験もまったくない若者。適切とは思わない。ヌガンバニ氏でいいのではないか」
議員が議員なら秘書も秘書。“ビッグジョン”と呼ばれる身長二〇九センチのムルアカ氏も外務省アフリカ第一課にでかけ、新大使と面会した担当者にたいし、課全体に聞こえる声で激しく非難しました。
「面会は日本国政府がヌグウェイ氏の立場を認めることにつながりかねないため極めて好ましくない。今後は会うべきでない」
まさに異常な介入です。
同年十月。ヌグウェイ氏にIDカードを発給すると説明にきたアフリカ第一課長に鈴木議員は強く反発しました。
「(わたしの)ひぼう、中傷をおこなうような人物を臨時代理大使として受け入れることは適当ではないのではないか」
驚いた外務省は新大使を選んだ「先方政府の検討を白紙に戻してもらう」という行動にでました。中近東アフリカ局長の指示で同局審議官をコンゴに派遣。外務副大臣との会談で審議官は「わが国として、このような人物を臨時代理大使として受け入れることにちゅうちょを感じている」とのべ、人事の再検討を提案、他国の大使館人事にまで干渉したのです。
結局ヌグウェイ氏は、IDカードの発給を受けることなく臨時大使の活動を終了。しかし、鈴木議員の関与はこれでおわりませんでした。
ヌグウェイ氏の後任となったのはムキシ氏。大使館のカギの引き渡しを拒んでいるヌガンバニ氏と激しく対立しました。
ヌガンバニ氏を応援する鈴木議員は二〇〇一年七月、外務省のアフリカ審議官にこういいました。
「ムキシ氏は勝手に査証を発給したり、記者会見をしたりしており、素行が悪い」
なぜ、ここまでして鈴木議員はヌガンバニ氏を応援するのか――そこに疑惑が浮上します。
ムキシ氏は野党プロジェクトチームのヒアリングで、外務省の担当者から「駐日コンゴ大使館通商代表機関」への協力を要請された、と語っています。
同機関の代表はムルアカ氏でヌガンバニ氏が顧問。コンゴ政府とは関係なく、定款で、日本市場のおけるザイール(当時)からの商品を独占的にあつかう権利を有すると記すなど、利権の影がちらつきます。
外務省からもいわれたとムキシ氏はいいますが、調査報告書はこの点を否定。ナゾが残ったままです。
機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。
著作権:日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp