2002年3月5日(火)「しんぶん赤旗」
「秘密指定解除」―。日本共産党による自民党・鈴木宗男衆院議員の「北方四島」支援事業をめぐる疑惑追及で四日、ついに「秘 無期限」の外務省資料に「解除」のスタンプが押され、国会に提出されました。外務省の報告書からは、鈴木氏が「激こう(高)」「声を荒(ら)げる」などの高圧的な態度で外務省側に圧力をかけ、意のままに入札に介入し、外務省側がそれに屈服している経過が明らかになりました。一方で、疑惑が指摘されながら解明されなかった問題もあり、鈴木氏の証人喚問など国会での徹底究明が求められています。
「ムネオ・ハウス」と呼ばれる国後(くなしり)島の「友好の家」入札に自民党の鈴木宗男議員が介入していた――。日本共産党の佐々木憲昭議員が二月二十日の衆院予算委員会参考人質疑で暴露した問題について、当の鈴木氏は「細かいことまで、話は、外務省から受けた記憶はありません」などと弁明していました。
ところが報告書は、佐々木議員と木島日出夫議員が提出した外務省などの四つの「秘」文書の「存在が確認された」とし、調査の結果、「鈴木議員は、入札参加資格決定に深く関与していた」ことを認めました。
報告書によると、九九年五月に外務省担当者が鈴木氏を訪問し、「ムネオ・ハウス」の入札参加資格について説明。これに対して鈴木氏が「北海道内ではなく根室管内に本社を有する者に入札参加資格を改める」ことを求めました。
そのため外務省は、入札参加資格を「北海道内に本社を有する者」としつつ、「気象条件が国後島に近似する根室管内において…施工実績を十分に有する者」という異例の条件をつけることとしました。
今回の報告書では、その後、入札参加資格案を鈴木氏に「説明」、「同議員は、これを了承」、これを受けて支援委員会事務局が入札参加資格を最終決定したことを指摘。外務省が鈴木議員の「意向に配慮しすぎたことは問題」と結論づけました。
日本共産党の木島日出夫議員が二月二十一日の衆院予算委員会で明らかにした、「ムネオ・ハウス」の入札公告前に関係者が鈴木事務所で会っていた問題についてはどうでしょうか。
報告書は、入札の公告が地元紙に掲載される十日前の九九年六月三日、北海道釧路市にある鈴木氏の事務所で、後に工事を受注する「渡辺建設工業」「犬飼工務店」、工事を丸投げされる「日揮」と鈴木氏の秘書が会っていたことを確認しました。
報告書ではコンサルタント会社の日本工営が地元業者の施工は無理だとして、入札公告前に日揮にたいし施工への協力を依頼し承諾を得ていたことも明らかにしています。
鈴木氏の秘書は、この会合について「何かのあいさつ程度だったと思う」と釈明していました。ところが、報告書は「日揮の社員が…本案件の内容を説明し、手伝いたいという話をした」「渡辺建設社長が既に本案件が発注されることを把握し、本案件受注に関心を有していた」と、「ムネオ・ハウス」受注をめぐる話がされたことを認めました。
この点について支援委員会は同年十月下旬から調査をおこないましたが、報告書はその経緯についても明らかにしています。
それによると、同年十月二十四日、「ムネオ・ハウス」のしゅん工式典に出席した鈴木氏が「(同工事に)地元の作業員がほとんどいなかったことについて激怒」。外務省関係者に対し、自分のところに支援委員会事務局の職員を来させるよう指示。その後、同氏を訪れた職員と外務省関係者を「怒鳴りつけながら、事実関係を徹底的に調べるよう命じた」のです。
その結果、「日本工営が入札公告前に業者に接触したことは問題がある」として、「わび状」の提出を指示。この「わび状」も木島氏が二月二十一日に予算委員会に提出していました。
佐々木議員が、事業を受注した業者から約三千三百万円の献金が渡っていると指摘していたのが、国後(くなしり)島の桟橋改修工事でした。報告書によると、この事業に鈴木議員が介入したのは、北海道開発庁長官時代の九七年十二月十一日です。
同月十五日に行われる国後島のはしけ「希望丸」の進水式日程を説明に訪れた外務省欧亜局(当時)関係者らに、鈴木氏はいきなり「外務省は誠意がないよな」と発言。「はしけにしても桟橋にしても、君らが知恵を出した話じゃない。自分(鈴木氏)が説得してやっと実現したものだ。それを、できあがったら自分(外務省)の手柄だなんて考えてもらっては困る」と非難しました。
さらに桟橋改修のコンサルタント会社の下請けが東京本社の「日本工営」であることに「激こう」。「以前から四島住民支援には根室等地元の企業を使えと何度も言ってきている。東京の大手コンサルを使うとはどういうことだ」と「声を荒げて」、地元業者を使うよう圧力をかけました。
外務省側はこの圧力に屈し、入札参加資格について協議。「入札参加資格を地元のみに縛ることは前例がなく不可能」との意見も出ましたが、何とか鈴木氏の意向通りに地元業者に受注させるため道東での施工経験を条件にしたり、入札説明会を根室で実施するなどの苦肉の策を考えました。
この案を持って九八年一月十九日、再び鈴木氏に説明。鈴木氏は「鉛筆でアンダーラインを引きつつ全文に眼を通した上で、『わかった。結構である』」と了承しました。鈴木氏は別の日にも「支援委員会事務局なり(ロシア)支援室なりが入札手続に関する規則云々と融通の利かないうるさいことを言っているとしたら我慢ならない」と外務省側を非難しました。
報告書では「一国会議員が自己の影響力を行使して、その変更を求める等細部にわたり、入札参加資格決定過程における関与が行われたことは異常であり、社会通念上あってはならないこと」、また、外務省側についても「同議員の意向に配慮しすぎたことは問題」と結論づけています。
外務省調査で解明されなかった重大な問題も残されています。その一つは、「ムネオ・ハウス」の入札にかかわって事前にコンサルタント会社「日本工営」と施工業者が鈴木議員事務所で接触しながら、情報漏えいの事実があったかどうかは確認できなかったという、入札妨害の疑惑です。
報告書では九九年六月三日午後、釧路市の鈴木事務所で「ムネオ・ハウス」をのちに受注する渡辺建設工業、犬飼工務店とその下請け会社が一堂に会し、「渡辺建設社長が既に本案件が発注されることを把握し、本案件受注に関心を有していた」ことが確認されています。
ところが外務省の聴取では、「日本工営」の社員がその場にいたかどうかは関係者の記憶があいまいで「説明が一致しない」ため、「確認することができなかった」としています。これは、ODA(政府開発援助)事業に広くかかわっている「日本工営」の関与をあいまいにするものです。
また、「如何なる情報を漏洩したかを確認することができなかった」から、告発等の刑事手続きをとらなかったとのべていますが、不正を見逃したとして外務省に責任が及ぶことを回避する思惑が透けて見えます。
この問題では七回も事情聴取していたことも分かっており、外務省側もオブザーバーとして参加していました。
さらに、国後島のはしけ「希望丸」建造の入札資格に関して「当初の審査基準を一部緩和したことを示唆する文書」があるとしながら、調査で経緯が明らかにならなかったとして、資料公表していません。これらの点でも、すべての関連資料の公開とそれに基づく集中的な審議が求められます。
1997年12月11日 外務省と支援委員会側が鈴木宗男議員を訪問。鈴木氏は「外務省は誠意がないよな」「東京の大手コンサルを使うとはどういうことだ」「こういう工事ぐらい地元企業に引き受けさせる配慮があってもいいだろう」などと地元業者を使うよう要求
98年1月19日 外務省と支援委員会側が鈴木氏を再訪問。地元企業が受注しやすいよう条件を広げた入札参加資格に鈴木氏は「わかった。結構である」と了承
1月30日 外務省側に鈴木氏が「支援委員会事務局なり支援室なりが入札手続に関する規則云々と融通の利かないうるさいことを言っているとしたら我慢ならない」などと非難
2月7日 新聞紙上に入札公告掲載
2月12日 入札説明会
3月6日 入札執行。島田建設、真壁建設、浜谷建設のJVが落札。3社とも鈴木氏の後援会で6年間で3338万円を献金
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