2002年3月2日(土)「しんぶん赤旗」
労働者が賃上げや雇用を守るなど要求の実現を求める二〇〇二年春闘は、労働組合が三月中旬のヤマ場に向けてたたかいを強めています。
今春闘で際立っているのは、財界・大企業が不況を最大限に利用し「賃金引き上げは論外」として、賃下げや定期昇給見直しの逆提案までしていることです。
すでに大企業各社では、賃金の3%〜10%カット(鉄鋼、電機など)や定昇の廃止、半減(キヤノンなど)という動きが相次いでいます。
ワークシェアリング(仕事の分かち合い)を理由にして最大20%の賃金カット(三洋電機)という新たな賃下げも広がりつつあります。
しかも「徹底して雇用の重視を」(日経連)と主張しながら、実際は「ベアを求めなかったから雇用は守って当然だ、とはならない」(羽矢新日鉄常務、「日経」二月十三日付)というように、人減らしも賃下げも進めるという横暴な態度です。
暮らしと雇用が危機的な状況にあるとき、企業の利益さえ上がれば労働者の生活など顧みなくてよいというのは、企業の社会的責任を放棄するものであり許されません。
春闘にたいする財界・大企業の言い分は、道理も根拠もありません。
電機大手は「赤字」を強調しますが、実際はリストラ費用など「前倒しできる損失を一気に計上し、来期に『V字回復』を目指す」(「日経」同二十五日付)ものであり「企業危機」とは無縁です。リストラ効果で高収益をもくろんでいるのです。
しかもため込み利益の内部留保は、電機十社だけで約十八兆八千億円(連結企業)に達しており、利益をたっぷり蓄積しています。
「日本の人件費は高すぎる」「国際競争力をそいでいる」という日経連の主張もインチキです。
時間当たり人件費は日本を一〇〇としてアメリカ一一六、ドイツ一一九(金属労協調査)、どれだけ物が買えるかという購買力平価でみた賃金はアメリカは一四三、ドイツは一七三とはるかに高いのが現実です。
国際競争力は低下しているどころか、財界系の社会経済生産性本部の調査(製造業)では世界第二位、実質労働生産性では世界一という強い競争力を保持しているのです。
「競争力の強化」を理由にした賃下げやリストラは何をもたらすか。
主要企業三百十社だけで人件費削減の規模は二年間に一兆円に達しています(大和総研推計)。
企業が人件費削減に走るなかで、国民の暮らしは四年間で勤労者世帯の可処分所得が年間三十九万円ダウンし、消費支出は二十七万円低下するという異常事態です。
このことが所得と消費、生産を連鎖的に落ち込ませ、日本経済の危機を招く要因になっているのです。
日経連も物価下落とデフレは「供給過剰と需要過少によって生じたもの」(〇二年版労働問題研究委員会報告)と認めているように、大不況の根本には需要不足があります。
国内総生産の約六割を占める個人消費を回復させることなしには日本経済の立て直しもありえません。
リストラ・賃下げに歯止めをかけ、労働者の賃上げや雇用の拡大によって国民の暮らしを元気にすることこそ大不況から脱出する道です。
財界の横暴、国民いじめの小泉「改革」と対決し、春闘を大きく発展させることは、暮らしと雇用を守り、日本経済の再生をはかるうえでも国民的な大義をもつものです。
機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。
著作権:日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp