日本共産党

2002年2月12日(火)「しんぶん赤旗」

マスコミ時評

「改革」ならいまだに“なんでも応援団”


 田中前外相の更迭をきっかけにした内閣支持率の急低落という事態は、国民と小泉政権との関係に劇的な変化が起き始めていることをしめしました。

 しかもマスコミの世論調査で、内閣不支持の最大の理由に景気悪化があがっているように、国民の批判は外相更迭問題にとどまらず小泉政治そのものにも向き始めているのが特徴です。

破たんした「改革」なぜ推進なのか

 こうした国民の変化にたいし、マスコミが内閣支持率急落の事態に、“「改革」なんでも応援団”ぶりを以前にも増して強めているのはどういうことか。

 株価、円、債券の「トリプル安」が起きると、「改革を失速させてはならない」(日経)「改革の成果が最大の薬だ」(毎日)「改革を催促している」(東京)――各紙は「改革推進」の大合唱です。

 日本経済を泥沼の危機に陥らせたのはだれなのか。大企業のリストラ・人減らしをあおり、不良債権処理を強行して中小企業をつぶし、大倒産・大失業でくらし犠牲と不況の悪循環を招いた小泉「改革」こそ、その張本人ではないのか。

 小泉「改革」の破たんが国民の前にいよいよ隠しようもなくなっている時に、なぜ「改革推進」なのでしょう。

 小泉政権が発足して九カ月、そろそろ頭を冷やして、何が不況を加速してきたのか、まともに吟味すべきときです。

 先の施政方針演説で、首相が「私の改革はまったく揺るがない」と力まざるを得なかったのは、「小泉改革重大転機」(読売)「小泉改革に不透明感」(日経)とマスコミがいっせいにあおり始めたためです。「朝日」二日付は「焦点の医療制度改革や有事法制では具体論に踏みこまない」ことをもって「改革姿勢に陰り」「政権は分岐点を迎えた」と書きました。

抜本的な改革の視点を欠いては

 しかし、サラリーマン本人の健保三割負担の問題は、負担増を強いられる側の痛みを少しでも直視するなら、これを「族議員の『反対』に反対する」(毎日)と相変わらず「首相vs自民党厚生族」の対立で描いたり、「痛みを安心につなげよ」(朝日)と負担増を当然視するような議論などできないはずです。

 マスコミ自身の世論調査でも、政府の「改革案」を「評価しない」が六割にのぼっています。国民が反対するのは、いま以上の患者負担は家計を破壊するし、ふところの心配なく安心して医者にかかれる医療制度本来のあり方にも逆行するからです。

 厚生族の主張にしても、三割負担の引き上げを認めた上で、実施時期をいつにするかという“攻防”に終始しており、保険料か窓口か、負担方式は違っても国民の負担増は変わりません。

 国庫負担の削減が健保財政の悪化を招いたのです。本当に持続可能な社会保障を実現しようというなら、国が社会保障に最優先で財政支出すること、高すぎる薬剤費に思いきってメスを入れることを、真剣に検討すべきときです。

危機打開の道を示し得ないのは

 いま医療費負担増が許されないのは、国民に耐え難い痛みを押しつけるためだけではありません。家計を直撃し生活不安を増大させ、国民の消費をいっそう冷え込ませて、日本経済の危機をさらに深刻化させることが明らかだからです。

 衆院本会議の代表質問で、志位委員長が国民のくらしと日本経済再生の道として提唱した、雇用、社会保障、税制の三つの分野で人間を人間として大切にするルールを求める「三つの提案」は、くらしと経済に重大な危機をもたらす小泉「改革」に対置して迫ったものでした。

 「日経」八日付は「経済再生 見えぬ論戦」「野党、独自案示せず」となで切りにする衆参代表質問のまとめ記事を載せましたが、志位氏の「三つの提案」には一行も触れていません。

 小泉「改革」と相いれない提案は黙殺して当然というのでしょうか。

 自民党政治の枠組みはそのままに、その枠内で「改革」を論じている限り、危機打開の出口も示し得ないのは明らかです。“なんでも応援団”であり続けることは、小泉政権とともに、日本経済をぬきさしならない破局に追いこむ道を行くことになります。(近藤正男記者)

 


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