2002年2月11日(月)「しんぶん赤旗」
大企業のリストラ・解雇によって失業率が最悪となる一方で、職場でまん延している違法なサービス残業(ただ働き)にメスが入っています。労働者や家族の訴えをもとに、労働基準監督署が動いているもの。日本共産党の職場支部が運動の先頭に立っています。サービス残業是正が大きな流れになりつつあります。(名越正治記者)
沖電気、日立、三菱重工、三菱電機、東芝、トヨタ自動車…。日本を代表する電機や自動車、建設、銀行などに労基署が次々調査に入り、改善するよう指導しています。
悪質なケースは、「臨検」とよばれる予告なしに本社や研究施設、工場に立ち入る抜き打ち調査も実施しています。兵庫県の三菱電機伊丹の事業所には、十二人の労基署員が「臨検」に入り、証拠書類などを多数の段ボール箱で持ち運びました。
日本共産党は、サービス残業の実態を告発してきました。労働者と労働組合の運動や、一九九七年以降だけでも八十七回にのぼる国会質問を行ってきた日本共産党の論戦が、昨年四月に厚生労働省が出したサービス残業解消に向けた通達に反映されています。
関東のある県労働局関係者は「労基署は本気になっている。千人ぐらいの事業所で複数人の告発があれば調査する。この問題では共産党にリードされた」。三菱重工を調査した兵庫・加古川労基署幹部は「通達がでて、強く指導できるようになった。口頭で申告があった場合でも調査に入ることになる」と語ります。
志位和夫委員長は七日の代表質問で「長時間労働の本格的な是正のために、まず、サービス残業とよばれるただ働きの根絶と、有給休暇の完全取得を徹底するため、それを保障する事業計画をつくることを企業に義務づける立法上の措置を」と求めました。
小泉首相は「その多くが賃金未払いという違法なものであり、解消に努める」と答弁しました。
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「助けてください。夫は毎日十五時間労働し、体を悪くして死にたいとまでいっています」
トヨタ自動車のグループ企業、愛知県の豊田工機の職場党支部に労働者の妻から寄せられた手紙です。
豊田労基署の担当者は「昨夏以降、サービス残業、長時間労働の問題での申告や相談が激増し、労基署として動いたものだけで約三十件。その半数は、労働者の妻など家族から健康を案じるものでした」と話します。
日本共産党の八田ひろ子参院議員は、昨年十二月の国会でこの妻の手紙を紹介して、政府を追及しました。労働基準局長は「十月に監督指導を実施し、労働時間にかかわる問題が認められ、指導中」と答えました。
月十五時間分しか払われていなかった裁量手当が倍近くの八万円余になった労働者も。「共産党の活動がなかったら、死ぬまで働かされることになりかねない」と喜びの声があがっています。
兵庫県の三菱重工高砂製作所のケースは、夫の身を案じた妻が、偶然受けとった日本共産党のビラを頼りに職場党支部にメールで実態を訴えてきたことがきっかけでした。
党支部は深夜、労働者の出門時刻を調査し、労基署に申告。労基署が立ち入り調査しました。
会社は(1)研究所は午後九時三十分で消灯する(2)これ以降の入門は原則禁止にする(3)休日出勤する場合はパスポート制を導入する―などの対応策を発表し、残業代が精算される動きがでています。
通信機器のしにせ、沖電気工業では、サービス残業の温床となってきたいくら働いても月四〜五万円の手当しか払わない擬似裁量労働制「HOPワーク」を違法として労基署が指導。昨年九月、退社時間を把握しない方針を改めて、出退勤時刻を記録する新システムを導入し、見直しました。
サービス残業なくせの運動は労働界全体に広がりつつあります。
全労連(全国労働組合総連合)は、春闘のなかでサービス残業の根絶、時間外労働の削減、50%を割り込んだ年休取得率の改善など長時間・過密労働の改善による雇用の拡大を求めています。
連合(日本労働組合総連合会)も、七日の中央執行委員会でサービス残業撲滅にむけ、二月第四週を産別・単組の時間管理の徹底や厚労省通達の周知徹底活動を支援することを決めました。
「割増賃金の未払いや過重な長時間労働」が広範にあることを認めて、「使用者に労働時間を管理する責務がある」と改めて強調。使用者が労働者の日々の始業・終業時刻を確認し記録すること。その方法は使用者の確認による記録やタイムカード、ICカードなど客観的な記録を原則としています。使用者による記録の場合は「該当労働者からも併せて確認することが望ましい」としています。
残業をした時間分の賃金を支払わないのは、労基法37条違反です。経営者は最低でも25%の割増賃率を加えて払う義務があります。不払いには罰則が適用されます。
日本共産党の小沢和秋衆院議員が昨年10月、衆院委員会で厚労省通達をどう徹底したかとただしたのに対し、坂口大臣は「通達が守られるよう9月までに4000回、30万事業所を対象に指導し、周知徹底してきた」。労働基準局長も「申告や情報提供があったら、監督指導を行うことにしている」と答えました。
(1)サービス残業がある職場は「ある」ということを労基署に訴える。沖電気の労働者たちは「他社でももっと気軽に申告を」と話しています。
(2)「残業日誌」運動を始める。三菱伊丹党支部の配布した日誌に労働者が記帳。これを労基署に提出し是正を要請。労基署が調査に入りました。
(3)申告は、労働者でも家族でも訴えられる。新日本婦人の会の申し入れに、「家族の訴えについては基本的に本人と同じように扱う」と労働基準局長が回答しました。
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