日本共産党

2002年2月7日(木)「しんぶん赤旗」

小泉「改革」 それってほんと?

「景気が悪いのは生産性が低いから」


 景気を回復するには生産性を引き上げなければならない――。こんな主張が、小泉流「構造改革」路線を支えています。

 この主張を裏づける“バイブル”が、米系大手コンサルタント会社マッキンゼーが一年半前に発表した日本経済への「提言」です。

 これを、経済財政諮問会議は「明るい構造改革」(「五百三十万人雇用創出」プラン)の下敷きに利用しました。また、日銀の中原伸之審議委員は昨年十二月、同リポートを使って、「国難の根本原因」は「低労働生産性」だとしました。

 リポートによると、国の経済力を測る国民一人当たり国内総生産(GDP)は労働生産性で決まり、それは日本では米国に比べ31%も低い。経済の大部分を占める内需産業が低いためで、だから、これらの産業での「構造改革」が必要だ、とのことです。

市場開放さらに米が日本に迫る

 そして、生産性の「高い」米国を手本に、建設業では税制などを変えて、住宅建設を工務店から大デベロッパー(開発業者)の手に移せ、小売業では、大規模小売店舗立地法を廃止して、大規模店の進出を促進せよ、などと提言。要は、「生産性が低い中小零細」企業を「駆逐」することだといいます。

 しかし、流通業ではすでに九〇年代に、大規模店が激増。半面、小規模店は減少を続けて、各地の商店街は“シャッター通り”と化しています。

 自民党政府は一九九八年に大規模小売店舗法を廃止しました。その背景に、八〇年代末以来の日米協議を通じた、米国の強い圧力があったことはよく知られています。その際、米側は「非効率」な中小業者の存在が「消費者の利益」を損なっていると主張しました。

 一方、オニール米財務長官は一月に来日した際、規制緩和で「価格競争」を促進することが、経済成長につながると主張しました。理屈は変わっても、米国が日本に市場開放を迫る姿勢は変わりません。この点で、マッキンゼーの分析は、オニール長官の主張と見事に重なっています。

生産性向上でも需要が増えねば

 マッキンゼーの分析は、中小企業が雇用の八割を担っていることにも、高齢化社会のなかで多様なサービスを提供していることにも、地域経済の主役であることにも、産業のバランスが必要なことにも、まったく配慮していません。

 米国の圧力のもとでつくられた、中小零細企業を徹底的に痛めつける大資本本位の経済が、日本の異常な不況の一因となっています。この提言はそのゆがみをさらに拡大するだけです。

 さて、千歩(百歩でなく)譲って、マッキンゼーの分析が正しいとしたら、どうなるか。

 リポートは、生産性の上昇が成長率を引き上げる理由として、生産性が向上すれば、消費が刺激され、雇用が増えるからだと説明しています。

 当然ながら、もし需要が増えなければ、GDPも増えないのです。リストラ・倒産によって、生産性を引き上げることが、消費のさらなる落ち込みではなく、引き上げにつながるという説明には、うさんくささがつきまとっています。

急落の原因は消費税増税

 ちなみに、実質GDPは九六年には3・5%増と一定の回復を示していました。それをたたき落としたのは生産性の急落などではなく、九七年の消費税増税でした。マッキンゼーの分析では、こうした動きは説明できません。

 ところで、「デフレ・スパイラルだ」と、物価下落を強く警戒する中原審議委員が、同時に、「生産性引き上げ」の名で、「価格競争」(オニール長官)を求めるのは奇妙な話です。

 結局、生産性と「構造改革」をめぐるこうした議論は、説得的でないばかりか、自民党政権の財政・金融政策がいかにゆきづまっているか、を示しています。

 


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