2002年2月7日(木)「しんぶん赤旗」
自民党の鈴木宗男衆院議員の外務省への介入が政治問題化しているなかで、日本のODA(政府開発援助)対象となっているアフリカ・ケニアの水力発電事業でも同議員の関与が問われる事態になっています。この事業では、鈴木議員(当時、官房副長官)がケニア側に「迅速な検討」を約束したことを示す外務省公電の存在が昨年の国会で明らかにされましたが、公電は公表されず、その真相は今も未解明。外務省の「透明性」をうたう川口外相は、この問題で真相を公表する責任があります。
問題となっているのは、ケニア西部のソンドゥ・ミリウ水力発電事業。ケニア側に返済義務のある円借款で進められています。両政府は一九九七年に工事一期分として約七十億円の円借款をケニアに与える交換公文を締結。日本の鴻池組などの共同企業体が一期工事を受注し、九九年に工事を始めました。
しかし、ケニアは深刻な財政危機に苦しむ重債務国。九九年六月のサミットで重債務国の債務免除が打ち出され、ケニアが債務免除を主張すれば新たな借款は与えられない事態も予想されました。
さらに、水力発電事業でソンドゥ川の流量が大幅に減り、流域住民や動植物への悪影響が懸念されることをNGOが指摘。事業そのものの可否が問題になってきました。
九九年八月、当時、小渕内閣の官房副長官だった鈴木宗男議員がケニアを訪問。昨年、国会で明らかにされた外務省の公電によると、鈴木氏は、ゴダナ外相との会談で「自分が帰国次第、関係省庁に連絡・指示をおこない、本件プロジェクトへの円借款供与への迅速な検討を進めることを約束する旨」を発言しました。
この直後の同年九月、外務省は二期工事分、約百億円の借款供与について「事前通報」しました。これは通常、交換公文締結を前提とした行為ですが、大蔵省(現財務省)が返済されない可能性を恐れて慎重になり、今なお交換公文は締結されていません。
ところが、ケニア側は借款が決まらないのに、二〇〇〇年一月に二期工事の入札手続きを始め、同年四月、鴻池組・大成建設の共同企業体に土木工事を発注しました。
借款が正式決定する前に、ODA工事の入札・発注がおこなわれるのも異常なら、「事前通報」がおこなわれたのに交換公文締結が二年以上遅れているのもきわめて異例の事態です。
外務省側がさまざまな懸念をよそに強引に借款供与を急いだのはなぜか、その背景に何があるのかが注目されます。
鈴木宗男議員は、マスコミにたいし、この問題で外務省や関係省庁に働きかけたことは一度もないと主張しています。
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