日本共産党

2002年2月5日(火)「しんぶん赤旗」

負けてたまるか リストラの職場で

日立でサービス残業是正へ

夜10時以降、出門時刻を記入

ねばり強い運動が実る

労働者 日本共産党


 違法なサービス残業(ただ働き)がまん延している日立製作所の職場で、労働時間の実態を正しく把握するための社内通達がだされ、サービス残業をなくす動きがはじまっています。昨年十一月、労働基準監督署が調査に入っていました。日立の労働者と日本共産党の粘り強い運動が実ったものです。(中村隆典記者)

 「ちょっと面倒くさいといいながら、みんな記帳していますよ」。仕事を終えて工場門から出てきた二十代の男性従業員がそう話します。

 茨城県の日立製作所水戸事業所。今年一月中旬から、夜十時以降に帰宅する従業員は、出門の際に必ず警備員立ち会いのもと、備え付けの部署別の台帳に氏名と出門時刻を記入することになりました。休日出勤の際は、入門、出門の両時刻を記入しています。

 「深夜一、二時まで仕事をしても残業代は三十時間で頭打ちになっているので、サービス残業はよくないと思いながら正直に申告したことはほとんどない。退勤時刻の記帳で少しでも早く帰れるようになればいいなと思っています」と先の男性従業員は話します。

労働時間管理徹底へ

 日立製作所には一九九八年、「Eワーク」という“裁量勤務”が導入されています。社員の三割近くを占める技師・主任クラス以上が対象です。

 この勤務の対象者は月に百時間残業しても残業代は三十時間でストップ。三十時間を超えて申告するとEワークからはずされ、昇格に支障がでるため正直に申告する従業員はほとんどいません。労働者の「自主申告」の名のもとにサービス残業を押しつけてきました。

 今回の社内通達はこうした違法な実態を是正し、「適正な労働時間管理」の徹底を図るためにだされたもの。門前での出退勤時刻の記帳の義務づけはその一環です。茨城県の大みか事業所などでも同様の通達がでています。

 職場にはタイムカードはありません。各人がパソコンで勤務時間や残業時間を自主申告することになっていますが、労働者は申告しないか、月末などに適当に付けているのが実情です。この実態も改め、各人が適正に自己申告するとともに管理者が日々承認することを求めています。門前での記帳時刻と一致しているかどうか確認されます。

実効性確保へ課題も

 サービス残業の実態を告発した労働者が日本共産党と連携し労働基準監督署を動かし、“世界の日立”が改善に着手したのです。

 「日立発祥の地」茨城県の各事業所は、昨年四月の厚生労働省の「サービス残業解消」通達以降も、サービス残業は放置されたままでした。

 日本共産党の小沢和秋衆院議員が昨年十月の衆院厚生労働委員会でこの問題をとりあげ、日比徹・労働基準局長に改善を約束させ急展開しました。同十一月には労働者と党県委員会、北部地区委員会が茨城労働局と日立労基署に是正指導を申し入れ、労基署はその直後に立ち入り調査し、是正指導しました。

 日立の労働者たちは「運動の大きな成果です。事実を示して追及し、道を切り開くことができました。今後、どう改善されるか、きびしく見守っていく必要があります」と口をそろえます。

 社内通達はだされましたが、その実効性を確保させるためにはまだ多くの課題があります。

 四十代の男性従業員は「労働時間をきっちり管理するようになるのは大変よいが、サービス残業をしなければどうにもならない状況に置かれている」と訴えました。

 設計部門などで働く人たちは、自分で設計予算を見積もり、その枠内で仕事をしています。他社との競争が激化するなか、コスト削減は至上命題。予算はいつもぎりぎりで、残業代を含む余裕などありません。

 「いつも赤字すれすれで製品をつくっている。予算枠を超えると、原価の管理はどうなっているんだと怒鳴られ、能力を問われる。どうしてもコスト意識が働き、残業代は最低限に削ってしまいます」と話します。

 また、先にふれたEワークという裁量勤務も、残業が三十時間を超えると、Eワークの対象からはずされ、「能力がない」とのレッテルを張られる状況は依然として変わっていません。

 大みか事業所の従業員がこういいました。

 「Eワークをはずれると、出世が遅れるという不安をなくしてほしい。こうした状況があるからみんな長時間残業を申告しなくなる。また、労働者一人ひとりにコスト意識を注入する生産システムもその要因になっている。こうした点を改善させるためには全社員共通のICカードによる労働時間管理がどうしても必要です」

 


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