日本共産党

2002年2月2日(土)「しんぶん赤旗」

"干渉、戦争挑発、侮辱"

米大統領「悪の枢軸」発言

各国から反発


 米国のブッシュ大統領が一月二十九日の一般教書演説で北朝鮮、イラン、イラクを名指しで「悪の枢軸」と決めつけて反テロ戦争の継続・拡大を宣言したことに対して、名指しされた三国と世界各国から厳しい非難と憂慮の声があがっています。

 イランのハタミ大統領は三十日、「干渉、戦争挑発、侮辱の発言であり、とりわけイラン国民に対する公然たる侮辱である」と、かつてない厳しい口調で非難しました。同国のハラジ外相はブッシュ発言に抗議して、ニューヨークでの世界経済フォーラム年次総会(通称、ダボス会議)への出席を取りやめました。

 イラクの国営紙アル・イラクは米国を「地球の唯一の悪魔」と呼びました。同国のアジズ副首相はイラクの対応策を検討するためモスクワ訪問を中断して、バグダッドに戻りました。

 北朝鮮外務省報道官は三十一日、ブッシュ演説を「事実上の戦争宣言である」と非難しました。

 中国外務省報道官は三十一日、「悪の枢軸」について「われわれは国際問題でこのような言葉の使用を主張しない」と批判し、すべての国が国連憲章などに基づき平等に扱われるべきだと強調しました。

 ロシアのプーチン大統領は三十一日、「力の一極集中による優位に基づく政策の独占に基礎を置いた」国際関係には展望がないと指摘、「すべての国、民族にとって平等な安全保障を守る真に公正な国際関係を発展させる」ことを呼びかけました。

 フランスのベドリヌ外相は三十日、「世界のすべての問題をそれ(対テロ戦争)に集約できるわけがない」と述べ、「特定の国が独断で対策を示せば、大量破壊兵器やテロ、危機が一気に解決するとは思えない」と述べました。

 米国や英国の新聞もブッシュ演説を批判しています。


米大統領

「三国敵視」演説続ける

米紙も「危うさ」に警告

 【ニューヨーク31日坂口明】ブッシュ米大統領が一月二十九日の一般教書演説で北朝鮮、イラン、イラクを「悪の枢軸」と敵視する発言をしたのに続き、三十一日のジョージア、フロリダ両州での演説で、これらの国が大量破壊兵器で米国を脅かすなら「処罰する」と、いっそう強い調子で“警告”しました。

 「悪の枢軸」発言は、米国内でさえ疑問の声が出ており、政府側は「三国を直ちに軍事攻撃するわけではない」など釈明に追われています。

 ブッシュ大統領は一般教書演説で、テロ組織の脅威の打破と、北朝鮮、イラン、イラクの「ならず者国家」の脅威の打破を「二つの目標」と同列に掲げ、両者は「世界平和を脅かすために武装する悪の枢軸を構成している」と非難しました。

 大統領はさらに、「私は危険が高まっている折に、何か出来事が起きるまで待つことはしないだろう」と言明。これは「通常兵器の先制使用を示唆する」(ニューヨーク・タイムズ三十一日付社説)発言だと解釈されています。

 しかし、昨年九月の同時テロと、これら三国を結び付ける材料も、三国が大量破壊兵器保有を拡大している証拠も、示されていません。

 世界最強のけた違いの軍事力を有する国で、大統領が率先して各地の緊張をあおる危うさについて、「力の限界」と題したニューヨーク・タイムズ社説は、同時テロ事件が「ブッシュ氏に無限の狩りの許可証を与えてはいない」と指摘。「対抗する者のない米軍事力は世界問題の強力な要素になりうるが、控えめ、賢明に行使すべきだ」と述べています。


「悪の枢軸」に攻撃も

米国防長官

 【ワシントン31日遠藤誠二】ラムズフェルド米国防長官は一月三十一日、国防大学で演説し、「現在、真に憂慮されるべきことは、テロリストのネットワークと大量破壊兵器を持つテロリスト国家の結びつきだ」とのべたうえで、これらの国家が核兵器をテロリストに渡したら、重大な危険をうむことになると強調。予想される新たなテロ攻撃は昨年の同時多発テロより「ひどく大きなものになる」と語りました。

 「最善の、いくつかのケースにおいて唯一の防衛は攻撃だ」とも語り、米国が戦線拡大の対象としてあげているイラクやイラン、北朝鮮などの「悪の枢軸」(ブッシュ大統領)にたいして攻撃も辞さない構えを改めて表明しました。


仏外相 独断は危機解決せず

仏マスコミ 軍事中心を批判

 【パリ1日山田俊英】ブッシュ米大統領が一般教書演説で「悪の枢軸」との戦いを強調したことに対しフランス政府、マスコミが批判を強めています。

 ベドリヌ外相は三十日、「テロとのたたかいが不可欠であるとしても、世界のすべての問題をそれに集約できるわけではない」とコメントし、「特定の国が独断で対策を示せば、大量破壊兵器やテロ、危機が一気に解決するとは思えない」とブッシュ政権の「単独行動主義」を拒否しました。

 仏外務省報道官も「フランスは(他国を)テロ国家と規定することはしない。考えるべきなのはテロとのたたかいにおけるすべての国の協力だ」と批判的見解を述べました。

 各紙は「『悪の枢軸』との戦争を呼びかけ」(フィガロ紙)と衝撃的に報じました。ルモンド紙は「戦争状態のブッシュ」と題した三十一日付社説で「米国は常に戦争状態になった」とし、「米国が冷戦と同じ苦難に備えなければならないとしている」と警告。「軍事予算は15%も増えた。テロ対策は米国防総省の予算問題なのか。政治や警察の協力の問題と思っているのか」と軍事中心の政策を批判しました。


英マスコミ

武断外交を懸念

 【ロンドン31日田中靖宏】ブッシュ米大統領の一月二十九日の一般教書演説について英国のマスコミは、反テロを看板にした武断外交の危険があるとの懸念を示しました。

 フィナンシャル・タイムズ紙は三十一日の社説で、テロや景気後退とのたたかいに理解を示しながら、「節度のある注意深い外交を捨てるべきではない」と注文をつけました。大統領がイラン、イラク、北朝鮮を名指しで「悪の枢軸」と決めつけたことについて同社説は、「レトリックの警鐘は危険だ」と指摘。三国をテロリストと同一視すれば「アジアや欧州、中東を遠ざけてしまう」と警告しました。

 同日付ガーディアン紙の社説は、反テロを口実に自国の武力政策を正当化する動きが世界的に広がるなか、ブッシュ政権による「テロ事件の政治利用」はとりわけ警戒しなければならないと強調。一般教書演説では、「あらゆることが愛国心と団結の名で正当化されている」と、右翼的な軍事偏重の外交姿勢を批判しました。

 この社説はブッシュ大統領を「真実の世界戦士を自称」する「単純で視野の狭い見方の持ち主」とし、同時テロの悲劇を好機とばかりに「米国と世界を自分の考えにあえて合致させるようなことは早晩やめなければならなくなるだろう」と書いています。

 


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