2002年1月29日(火)「しんぶん赤旗」
小泉「構造改革」のもとで深刻化する雇用不安。完全失業率は過去最悪の5・5%に達しました。さらに今後、上場企業だけで五十万人近い人員削減を計画しています。リストラの特徴は、企業の社会的責任を投げ捨て、労働者保護の法律や判例法を無視した早期退職、転籍の強要です。この不法行為を告発し撤回させるたたかいが職場から始まっています。
各産業で大企業は、人減らしリストラを解雇という方法ではなく、大規模な「希望退職」、転籍の強要によってすすめています。これ自体、合理的理由のない大量人減らしを禁じた「整理解雇四要件」に抵触します。しかも、民法第六二五条は、転籍にあたっては「本人の同意」を条件にしており、強要は違法です。退職強要の違法性は最高裁の判例でも確定しています。
政府も、先の国会で日本共産党の小沢和秋衆院議員の質問に「労働者本人の自由な意思決定を妨げる一定限度をこえた退職勧奨は違法であり、損害賠償の責めに任ずる、というのが下関商業高校事件での裁判所の考え方」(01・11・21、日比徹労働基準局長)と答弁しました。
このように大企業のリストラは法違反という弱点を持っています。「希望退職」や転籍強要には現行法や判例法をもとにたたかえば、やめさせることができます。
最近の例でも、いくつも「希望退職」や転籍の強要を撤回させています。
「六割の賃金では生活できません」。こう主張しつづけ、転籍を撤回させたのは住友金属和歌山製鉄所の労働者。純粋持ち株会社をめざす住友金属は、九千人の出向者全員を六割から八割の賃金で出向先に転籍させようとしています。転籍を拒否する労働者に会社は「応じなければ職場はない」と数度にわたって説得を繰り返していました。明らかな違法行為です。こうした事実を国会で小沢議員が追及。「しんぶん赤旗」の報道もあって会社は、労働者に謝罪し、転籍を撤回しました。
京都の村田機械。三十八歳から五十八歳までの二千二百人を対象に「希望退職」を募集。応じない労働者には十一回も呼び出し、退職を強要。応じないとみると子会社への転籍を迫りました。労働者たちは、京都労働局に是正を申告。労働者の訴えをうけ労組が交渉し、会社は転籍を撤回しました。労働者たちは、引き続き不当出向とたたかっていますが、こうしたなかで「退職・転籍強要をはねかえす四カ条」(別項)が生まれました。「私はこの会社に残ります」とのきっぱりとした意思表明が、「希望退職」、転籍強要をはねかえす一番の力です。
十一万人のリストラをすすめるNTTにたいして労働者は、現行法や判例をもとに「労働者の自由な意思を尊重せよ」と運動しています。五十歳以上の労働者にたいしNTTが、広域配転を条件にNTTに残るか、基本賃金70%で外注子会社に転籍するかの選択を迫っていることに対置した運動です。全国の職場で、労組の違いをこえて労働者が集いを重ね、さまざまな名称の会が生まれています。NTTは労働者に転籍を迫る外注子会社についての労働条件を示していません。労働契約を結ぶさい就業場所や労働条件を明示しなければならないとした改定労基法第一五条違反行為です。
一九九九年に東芝・静岡富士工場は二千四百人全員を転籍させようとしました。これについて日本共産党の市田忠義参院議員が国会で追及。当時の労働基準局長は「元の労働契約を終了させ、新たな労働契約のもとで労働者の合意が必要」(九九年三月九日)と答弁しました。転籍にあたっては「本人同意」と「労働条件の明示」が必要としたのです。この結果、東芝は転籍計画を一時撤回せざるをえませんでした。
▽「転籍や退職の勧奨行為は、限度をこえれば違法な権利侵害となり、損害賠償の支払い義務が生じる」〔一九八〇年七月十日、最高裁第一小法廷判決・下関商業高校事件)
▽民法第六二五条 別会社への転籍は本人の同意がなければできない(「使用者は労務者の承諾あるにあらざればその権利を第三者に譲渡することを得ず」)
▽改定労基法第一五条 労働契約を結ぶさい契約期間、就業場所、業務に関する事項、労働条件などを明示しなければならない
▽契約が反復更新されている場合、最高裁の考え方は「有期の労働契約が反復更新されて、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態になった場合には、解雇に関する法理が類推適用される」(一九七四年七月二十二日、最高裁第一小法廷判決・東芝柳町工場パート解雇事件)
最高裁が退職勧奨で限度をこえた不法行為とした「五項目の判断基準」は次のとおり。
(1)出頭を命ずる職務命令が繰り返される。
(2)はっきりと退職する意思がない労働者に、新たな退職条件を提示するなどの特段の事情がないのに執ように勧奨を続ける。
(3)退職勧奨の回数や期間などが、退職を求める事情の説明及び優遇措置など退職条件の交渉に通常必要な限度にとどまらず、多数回、長期間にわたる。
(4)労働者に精神的苦痛を与えるなど自由な意思決定を妨げるような言動がある。
(5)労働者が希望する立会人を認めたか否か、勧奨者(会社側)の数、優遇措置の有無などについて問題がある。
以上の点を総合的に勘案し、全体として労働者の自由な意思決定が妨げられる状況にあったか否かで、その勧奨行為の適法、違法かの判断基準にします。
一、ルールにもとづいて堂々と
「私はこの会社に残ります」―この一言があなたと家族の生活を守るたしかな力です。
転籍(移籍)とは、いまの会社を解雇されることですから、法律は「本人の同意」を厳格に決めています。これが社会のルールです。
二、「イエローカード」で警告を
それでも会社は、「同意」を迫ってくるでしょう。
その時は、「これ以上の説得や面談はやめてください」ときっぱり。
三、「レッドカード」をだしましょう
この“警告”を無視して、「『同意』するまで面談をやる」「応じなければ職場はない」などと迫れば違法です。
「労働基準監督署か弁護士に相談します」とレッドカードをだしましょう。
四、労働基準法は「不利益扱い」を禁止。一人で悩まず、みんなで相談を
そうはいっても、「後でどうなるかが心配だ」と悩んでいる方も多いでしょう。そんな時のために、労働基準法には「労働者を守るルール」があります。悩んでいるのはみんな同じです。職場の仲間と相談しましょう。「三人寄れば文殊の知恵」、知恵も勇気も出てきます。日本共産党も応援します。
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