2002年1月22日(火)「しんぶん赤旗」
本紙が報道した全国のダム建設をめぐる談合疑惑（二〇〇一年八月三十一日付）で、「受注本命企業」とされたゼネコンがあの手この手で懸命の受注獲得作戦をおこなっています。談合疑惑が明るみにでてもなお、発注官庁と一体となって追及をのがれようとする動きを追跡してみると――。
本紙がダム建設下請け企業である山崎建設（東京・中央区）の内部資料で「受注本命」企業を報道した後、初めて入札されたのは太田川ダム本体工事（静岡県発注）。
入札（十八日）では本紙報道どおり、「本命」の大成建設が本体工事共同企業体（ＪＶ）の幹事社として落札。談合疑惑を裏付ける結果になりました。
しかし、工事すべてはとれず、大（本体工事）、中（骨材製造工事）、小（転流工事）と三つに区分された工事のうち最大部分を受注することに。
中堅ゼネコンの営業担当者はその事情を説明します。
「このダムはもともと一本で出るはずだった。しかし『赤旗』の記事が出たので、急に、三つの工事に分けるようになった。一本の工事を三つに分け、『本命企業』が露骨にとったような印象を薄めようとした」
入札直前には、日本共産党静岡県議団にさらにくわしい談合情報がよせられ、県当局も「調査」をしましたが、結局、「本命」は動きませんでした。
三月に入札が予定されている国土交通省発注の森吉山ダム（秋田県）でも似た動きがあります。
当初、一本と見られていた工事が本体工事、骨材製造工事など三つに分かれて発注されます。
別のゼネコン関係者はその事情についてこう説明します。
「『赤旗』報道を受け、発注者側も『本命』とされたハザマにおりるようにいったが了承しなかったと聞いた。しかし、『本命』どおりではあまりに露骨なので三つに分けた」
国交省は疑惑の追及どころか、疑惑隠しに加担する姿勢です。
ゼネコンのねらいは他の事情からもうかがえます。
公正取引委員会は昨年十二月、財団法人・東京都新都市建設公社発注の土木工事で談合行為をしていたとして、ゼネコン三十四社にたいし独占禁止法違反（不当な取引制限）として総額七億円の課徴金の納付を命じました。
通常なら従う命令をゼネコン三十四社が拒否し、審判開始請求をしました。このなかには、太田川ダムの本体工事を受注した大成建設も入っていました。
「異例」の対応について、ゼネコン関係者は「談合を認めたら、指名停止になり、入札に参加できなくなる。そうすると『本命』が工事をとれない。ダムのような大型工事はもう期待できないので、戦った方が得策と判断した」と解説しています。
発注官庁 地域 ダム工事名 落札予定業者名 国土交通省 岩手 胆沢ダム 大成建設 国土交通省 秋田 森吉山ダム ハザマ 国土交通省 秋田 成瀬ダム 西松建設 国土交通省 長野 戸草ダム 大成建設 国土交通省 熊本 川辺川ダム 清水建設、前田建設工業 国土交通省 熊本 立野ダム 大成建設、鹿島建設 国土交通省 大分 大分川ダム 鹿島建設 国土交通省 福井 足羽川ダム 前田建設工業 北海道開発局 北海道 徳富ダム ハザマ 北海道開発局 北海道 夕張シューバロダム 鹿島建設 北海道開発局 北海道 留萌ダム 佐藤工業 農水省 鹿児島 荒瀬川ダム 三幸建設工業 水資源開発公団 大分 大山ダム 熊谷組 水資源開発公団 滋賀 丹生ダム 鹿島建設、ハザマ 青森県 青森 駒込ダム 西松建設 茨城県 茨城 浄蓮寺ダム 鹿島建設 新潟県 新潟 奥胎内ダム 本間組 新潟県 新潟 鵜川ダム 佐藤工業 新潟県 新潟 常浪川ダム 福田組 新潟県 新潟 儀明川ダム 大豊建設 新潟県 新潟 入川ダム 大成建設 石川県 石川 辰巳ダム 飛島建設、奥村組 福井県 福井 河内川ダム ハザマ 長野県 長野 蓼科ダム 大成建設 三重県 三重 鳥羽河内ダム 三井建設、不動建設 三重県 三重 伊勢路川ダム 鹿島建設、三不建 滋賀県 滋賀 北川第一ダム 大成建設 広島県 広島 福富ダム フジタ、ハザマ 山口県 山口 平瀬ダム 佐藤工業 福岡県 福岡 五ケ山ダム ハザマ、清水、飛島 竹中土木 福岡県 福岡 伊良原ダム ハザマ、日本国土開発 福岡県 福岡 藤波ダム 熊谷組、奥村組 大分県 大分 稲葉ダム 大成建設
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