2002年1月20日(日)「しんぶん赤旗」
雇用不安が広がるなかで浮上しているのがワークシェアリング。雇用対策の決め手になるのか。そもそもワークシェアリングとは何か。考えてみました。
Q 失業率が急上昇してから、よく聞く言葉だね。
A 財界団体の日経連は十一日に臨時総会を開き、ワークシェアリングを春闘対策方針の柱として打ち出したんだよ。政府、連合、日経連は、「政労使ワークシェアリング検討会議」を開いている。企業でも三洋電機、富士通などが実施をめざしている。
Q そもそもどういう意味なの。
A 「仕事の分かち合い」(英語でWorksharing)と訳されている。一九七〇年代からヨーロッパの一部で実施され、いまEU(欧州連合)全体の課題になっている。目的は失業率を下げることにある。日本でも失業者が急速に増え、雇用対策としてクローズアップされ、政府・財界も言い出したわけさ。
Q 本家はヨーロッパなのね。
A 欧州各国の動きは左上の表にまとめてあるけど、ILO(国際労働機関)などは、労働時間を短縮して仕事を分かち合い、雇用を確保・創出する施策と位置づけている。
Q 日経連のいうワークシェアリングとは意味あいが違うんじゃないの?
A そこがポイントなんだ。日経連は最初から「就労時間を減らし、その分、賃金を下げて雇用を維持する手法」(二〇〇〇年版『労働問題研究委員会報告』)と、あくまで賃下げを基本としているんだ。
Q それってワークシェアリング?
A 奥田碩会長は十一日の総会あいさつで「雇用維持」と「総額人件費を抑制する」が「二大原則」と明確だよ。
Q 「会社都合型」「賃下げ型」ワークシェアだ。
A もう一つ、日経連のいう仕事の分かち合いの目的は、正社員を減らしてパート・派遣・アルバイト労働者をふやす(雇用形態の多様化)ことにあるというんだ。一方で大リストラをすすめながらだろ。雇用不安解消どころか拡大だよ。
Q 要するに同じワークシェアリングといっても議論の出発点が違うんだね。
A その出発点に戻ると、失業者急増の日本でワークシェアリングが目的にしている雇用拡大、労働時間の短縮にとって何が必要だと思う?
Q 私が質問者なんだけど、まあいいや。友達をみてもリストラにあう人と、長時間働く人と両極端。そういう人たちで仕事を分かち合うというのはどう?
A そこだよ。労働時間の短縮は、日本の労働者にとって長年の大問題だよね。ところが労働時間は二〇〇〇年に増加に転じ、ここ数年、残業で長時間働く人もふえてきた。ワークシェアリングに逆行だ。
Q ヨーロッパは週三十五時間とかに進んでいるのにね。
A 加えて時間短縮の緊急課題は、ヨーロッパにない不払いのサービス残業(ただ働き)のひどさだ。試算では年三百六十九時間もあり、これをふくめると年間実労働時間は二千三百時間を超えるそうだ。
Q 休暇も少ない。
A 有給休暇をとる日数がどんどん減って、いま取得率は五割をきる49・5%しかない。どれもこれも労働基準法違反ばかりだ。
Q ワークシェアリングをいうなら、そこを転換、改善することが第一だね。
A うん。全労連が参加する国民春闘共闘委員会は、リストラ規制とともに雇用拡大のためにはサービス残業根絶や残業削減を主張している。財界系のシンクタンク社会経済生産性本部も、一番強調しているのは「思い切った労働時間の短縮」だ。
Q 労働時間短縮で雇用はどれだけふえるの。
A サービス残業は労基法に違反する犯罪だ。これを根絶すれば、社会経済生産性本部の試算によると雇用は九十万人増える。さらに、政府の労働時間削減対策(残業削減、有休完全取得、完全週休二日制)を100%実行するだけでも三百八十万人の雇用創出になる。合わせれば四百七十万人にもなる。
Q すごい数。三百五十万人の完全失業者は、それで解決じゃないの。
A 全労連は、加えて「公的雇用の拡大」を提案している。国基準・目標にてらして不足しているホームヘルパー、看護婦、教員、保育士、消防士などをすぐふやせば百六十七万人の雇用創出ができると試算している。
Q 思いきって労働時間を短縮し、仕事をみんなで分かち合えば雇用を大きくふやすことができるということだね。
A リストラ反対と合わせて、雇用拡大、労働時間短縮、失業者ゼロの大運動をおこしていきたいね。
「雇用形態多様化の一環として位置付ける」
「当面…労働時間を短縮して雇用を維持し、賃金・賞与など、総額人件費を縮減する方法が講じられるべきと考える」
「日経連がワークシェアリングを主張するなら、賃下げ、不安定雇用の拡大を押しつけるのでなく、サービス残業の根絶、時間外労働の削減、有給休暇の完全取得によって雇用拡大を図るべきである」(2002年国民春闘・闘争宣言)
「社会合意を通じ、労働時間短縮や仕事の分かち合いによって失業の減少をはかる施策といえる」「時間管理の徹底により、サービス残業をなくしていく取り組みが不可欠の前提」(2002年連合白書)
「まず長すぎる残業時間を縮減しサービス残業を解消するとともに、年次有給休暇の取得率を高め、生産性の向上を図るべく労使共同の取り組みが不可欠」
(1)年次有給休暇の完全取得の促進(2)所定外労働(残業)の削減(3)完全週休2日制の普及拡大をかかげている。また、「ホワイトカラー層をはじめとした適正な労働時間の管理」をあげ、「サービス残業を生むような土壌をなくしていく」としています。(2001年8月3日、閣議決定)
機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。
著作権:日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp