2002年1月6日(日)「しんぶん赤旗」
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アフガニスタンのタリバン政権は、「宗教」上の理由から、学問の自由に敵対し音楽や偶像崇拝を禁止しました。そのため、アフガニスタンでは音楽を聴くことも人物画を所持することも禁じられました。首都カブールの名門大学、カブール大学では多大な被害を受けました。なかでも芸術学部は自由な芸術表現を禁じられ廃止寸前まで追い込まれました。
「いまやっと、卒業生たちの作品を展示するギャラリーの再建を始めたばかりです」
目を細めるのは、カブール大学芸術学部のムハマド・アジム・フサインサダ副学部長(40)です。十四の学部がある同大学は数多くのエリートを輩出してきた名門の大学です。
しかし九〇年代の内戦時は軍事勢力がキャンパスを拠点にして内部を破壊、タリバン政権時代は、学問・芸術への弾圧が加えられました。
十三年前に副学部長に就任したフサインサダさん、「タリバン政権時代は非常に困難な時代でした。多くの学科は閉鎖されるか活動休止に追い込まれました。五百人在籍した学生も激減し、卒業生は二年前に数人出せただけでした」と振り返ります。
フサインサダさんは、タリバンの学部長のいなくなった現在、実質的な学部長です。
「タリバンが政権を握り、音楽や人物・動物を描くことを禁止しました。音楽学科と映画学科はともに閉鎖。絵画学科も中断に追い込まれました。演劇学科では演劇を自由に選び演じることができなくなったばかりか、『イスラムでは宗教的にしか礼をしない』として演者が観客に頭を下げることを禁止。観客は拍手することを禁じられました。教員らは国外に逃れ、国民の芸術への関心は低下しました」
学部棟を占拠したタリバンらによって大学所蔵の絵画や学生らの描いた人物画、楽器が破壊されたといいます。
しかし、フサインサダさんらは、芸術を守ろうと楽器を隠れた場所に移したり、絵画を土中に埋めたりして隠しました。
「タリバンらの課した制限にたいし、私たちは、アフガニスタンの文化と芸術を守るために活動しました。例えば私たちは教員の個人宅などで人物画の授業を続けました。教員は皆、さまざまな方法で芸術と文化を守ろうとしたのです」
見つかれば、ムチ打ちの刑、すべての作品の破壊、公衆の面前での悪罵(あくば)が待っていたといいます。
フサインサダさんが、学部棟二階のギャラリーに案内してくれました。タリバンが去ってすぐに再建をはじめたものです。絵画の中には、アフガニスタン北部の伝統的な毛糸をつむぐ女性の絵画、国民的な画家を描いた絵画など、これまで禁じられていた絵画が何はばかることなく掲げられています。
「一時は二千以上の作品がありました。しかし内戦で破壊され多くをなくしました、タリバン時代には土中などに隠したりしていました。残った絵画を修繕しているところです」
新政権への要望について、フサインサダさんは「アフガニスタンを統一し、長年の戦争の傷を癒してくれることを何よりも望みます」と語ります。
「新学期が始まれば、たくさんの女子学生も迎えることになるでしょう。演劇・映画学科に在籍していた女子学生が再登録にきています」と目前の新学期に思いをはせるフサインサダさん。
「大きな破壊を受けた私たちには援助が必要です。音楽学科はほとんどの楽器を破壊され、劇場の再建、絵画道具も必要です。あなたを通して国際社会にたいしてぜひ援助を訴えたい」と熱く語りました。(カブールで西尾正哉)
カブール大学
アフガニスタン最大の高等教育施設で一九三二年創立。
医学部、法律・政治学部、理学部、経済学部、農学部、教育学部、工学部、薬学部など十四学部を擁していました。九二年から一部施設の閉鎖が始まり、タリバンが政権を握った九六年にほとんど閉鎖されました。同国の最高教育施設にはこのほか、マザリシャリフ大学、ニンガルハル大学、カブール工科大学があります。
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