2002年1月3日(木)「しんぶん赤旗」
日本最大の企業・トヨタ自動車(本社・愛知県豊田市)とそのグループ企業で、日本共産党職場支部の告発や呼びかけをうけ、労働基準監督署への労働者の申告や社会的批判が広がり、サービス残業(ただ働き)を是正する動きが急速に強まっています。(原田 浩一朗記者)
職場新聞「はぐるま」を配る労働者たち。右端が吉田さん=2001年12月21日朝、愛知県刈谷市の豊田工機本社正門前 |
昨年、暮れもおしつまったある日。日本共産党の職場新聞「はぐるま」をもって豊田工機(本社・刈谷市)職場党支部の吉田英二さん(50)が労働者宅を次々訪ねました。
トレーニングウエア姿で出てきた技術者のAさんが「はぐるま」を見ていいました。「そうでしたか。それで十月から、裁量手当が四万円上がったんですね」
「はぐるま」は、労働基準監督署から会社に指導が入っていることを伝えていました。
自動車の足回り品と工作機メーカーの同社ではサービス残業による影響は深刻でした。「助けてください。…夫は毎日十五時間労働し、体を悪くして死にたいとまでいっています」。労働者の妻から党支部に寄せられた手紙です。
Aさん自身も「毎月、八十時間前後の残業はしている」のに裁量手当の約十五時間分の四万四千円しか支払われていませんでした。
日本共産党の八田ひろ子参院議員が、国会で先の妻の手紙も示して同社のサービス残業の実態を追及。労働基準局長は「十月に監督指導を実施し、労働時間にかかわる問題が認められ、指導中だ」と答弁しました(昨年十二月十一日)。
Aさんがいいます。
「共産党のみなさんの活動が、サービス残業や長時間残業の歯止めになっています。裁量手当は約三十時間分の八万円余にあがりました。みなさんの活動がなかったら、私たちは死ぬまで働かされることになりかねません」
トヨタ自動車では、開発、設計、営業などサービス残業が横行していた職場で、昨年の夏以来、午後十時以降の残業は事前申告制になりました。午後八時ごろになると、組合役員や管理職が職場を見まわります。十月にも労基署は、トヨタ自動車に調査に入りました。
こうしたトヨタ自動車の動きが、グループ会社に波及しています。
国内最大手の自動車部品メーカー、デンソー(本社・愛知県刈谷市)の開発部では、部署ごとに最後に帰る社員名と時刻をホワイトボードに記入。翌朝、事務員がチェックしています。
自動車部品大手のアイシン精機(本社・刈谷市)では昨年十一月、サービス残業是正のため、労働組合と会社が初めて交渉のテーブルにつきました。
トヨタ自動車やグループ企業でサービス残業是正の機運をつくりだしたのは、職場の党組織のねばり強いとりくみでした。会社や組合、労基署への申し入れ、駐車場出口での退社時間の実態調査、労働者宅を訪問しての聞き取りを繰り返してきました。こんな声がかえってきています。
「いつも夜遅くまで働いていて、早いときで八時、遅いときは十時すぎ、休みのときは外に出たがりません」
「元気で働いていた同じ課の人がポックリなくなった。おれも心配だ」
トヨタ自動車日本共産党委員会の機関紙「ワイパー」はじめ各職場新聞は、こうした実態を告発。厚生労働省のサービス残業是正通達も紹介しながら、「自分と家族のために勇気をもって労基署に訴えよう」とよびかけてきました。
労働者や家族がこれに励まされ、実態を相次いで労基署に申告します。
豊田労働基準監督署の担当者も、「(昨年)夏以降、サービス残業、長時間労働の問題での告発や相談が激増し、労基署として動いたものだけで約三十件。その半数は、労働者の妻など家族からのもので『連日帰宅が深夜。このままでは倒れてしまう』と健康を案じるものでした」と話します。
労働組合も動きだします。トヨタ・グループ企業の労働組合の連合体である全トヨタ労働組合連合会の岡正規副事務局長は、「サービス残業の是正勧告をうけるなど本当に恥ずかしい。九月の定期大会でも重視して、サービス残業根絶のため各社の労使でよく話し合うように提起した」と語ります。
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